今回は非公開会社の役員変更の登記について12月の司法書士会の研修までに知識を再確認します。
なお、私は司法書士有資格者で登録をしていないので相談業務は行っておりません。
ご理解ください。
非公開会社の機関のパターンについて
大会社以外の非公開会社の場合
- 取締役
- 取締役+監査役(定款の定めにより監査の範囲を会計に関するものに限定しているものであってもいい)
- 取締役+監査役+会計監査人
- 取締役会+会計参与
- 取締役会+監査役(定款の定めにより監査の範囲を会計に関するものに限定しているものであってもいい)
- 取締役会+監査役+監査役会
- 取締役会+監査役+会計監査人
- 取締役会+監査役+監査役会+会計監査人
- 取締役会+監査等委員会+会計監査人
- 取締役会+指名委員会等+会計監査人
なお、⓸以外の場合でも、会計参与はいずれにおいても置くことができます。
大会社以外の非公開会社の機関の構成は以上になります。
大会社である非公開会社の場合
- 取締役+監査役+会計監査人
- 取締役会+監査役+会計監査人
- 取締役会+監査役+監査役会+会計監査人
- 取締役会+監査等委員会+会計監査人
- 取締役会+指名委員会等+会計監査人
大会社である非公開会社の機関の構成は以上になります。
会計参与はいずれの場合にも置くことができます。
大会社は会計監査人を置かなければいけない点に注意が必要です(会社法328条2項)。
就任登記について(非公開会社で取締役会非設置会社を想定)
非公開会社の取締役の就任登記(各自代表の場合)
今回は、非公開会社において、株主総会(選任時の取締役はA)で、新たに取締役にBを選任したケースです。
登記申請情報は以下のような感じです。
登記の事由 取締役及び代表取締役の変更
登記事項 令和5年6月23日次の者就任
取締役C
東京都文京区湯島7丁目2番地
代表取締役 C
登録免許税 金3万円(資本金の額が1億円以内の場合は金1万円)
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
就任承諾書 1通
印鑑証明書 2通
委任状 1通
解説
注意するのは、非公開会社の取締役の就任登記場合、公開会社の取締役の就任登記と異なり、就任承諾書に新しく取締役に選任されたCの実印が必要になるため、印鑑証明書が必要となる点です(商業登記規則61条4項)。
もっとも、再任された場合や、合併・組織変更による設立の場合は不要となります。
また、各自代表の場合は、取締役に選任されたものは代表取締役になりますので、代表取締役の就任登記が必要になります。
非公開会社において取締役を選任した場合で、各自代表の場合は、議長及び出席した取締役が株主総会議事録に押した印鑑の、市町村長の印鑑証明書が必要になります。
ただし、変更前の代表取締役が株主総会に出席し、登記所に提出した印鑑を株主総会の議事録に押印している場合には、議長及び出席取締役の印鑑証明書は不要です。
登録免許税ですが、資本金の額が1億円以下の場合は1万円で、1億円より多い場合は3万円になることに注意してください。
監査役の就任登記
監査役設置会社の定めの設定とともに監査役が就任した場合のパターンです。
登記申請書は以下のようになります。
登記の事由 監査役の変更
監査役設置会社の定めの設定
登記事項 令和5年6月21日監査役D就任
同日監査役設置会社の定め設定
登録免許税 金6万円
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
就任承諾書 1通
本人確認証明書 1通
委任状 1通
解説
非公開会社でも取締役会設置会社の場合は、監査役を設置しなければならないのですが、このケースでは非公開会社で取締役会非設置会社を想定しているため、監査役の設置は任意です。
この場合、監査役を選任するには、監査役設置会社の定めの設定登記が必要になります。
添付書類としては、監査役の本人確認証明書が必要になることに注意が必要です。
もっとも、再任の場合は不要です。
登録免許税が金6万円となっていますが、内訳は登記事項変更分(監査役設置会社の定めの設定)が金3万円、役員変更分が金3万円となります。
なお、資本金が1億円に下の場合は役員変更分が金1万円となりますので、金4万円になります。
監査役の兼任禁止について
監査役は、次の地位を兼ねることができないとされています(会社法335条2項)。
- 当該会社の取締役または支配人その他の使用人
- その子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、執行役又は支配人その他の使用人
なお、監査役が当該会社の会計参与を兼ねることについては、会社法335条2項では触れられていませんが、会計参与の欠格事由とされていることも注意してください。
会計参与の就任登記
会計参与設置会社の定めをして会計参与を選任した場合の登記申請書です。
登記の事由 会計参与の変更
会計参与設置会社の定め設定
登記事項 令和4年6月29日次の者就任
会計参与 E
書類等備置場所 東京都台東区上野〇丁目〇番地
同日会計参与設置会社の定め設定
登録免許税 金6万円
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
就任承諾書 1通
税理士であることを証する書面 1通
委任状 1通
解説
会計参与の資格について
会計参与の資格者は 会計参与になれるのは会計専門家である税理士(税理士法人を含む)・公認会計士(監査法人を含む)に限られています。
それ以外のものはなることができません。
そして、会計参与の資格者であることを証明するため、添付書類として税理士であることを証する書面が必要になります。
会計参与が監査法人又は税理士法人の場合は、当該法人の登記事項証明書が必要です。
もっとも、申請先の登記所と同一管轄区域内に当該監査法人又は税理士法人の主たる事務所がある場合は、登記事項証明書は不要となります。
また、会社法人等番号を記載した場合も、登記事項証明書の添付省略は可能となります。
書類等備置場所の記載について
会計参与は、その事務所の中から、計算書類や会計参与報告書等を備え置く場所を定め(施103条2項)、株主や債権者からその閲覧、謄抄本の交付等の請求を受けた場合は、応じる義務があります(会社法378条)。
そのため、申請書に書類等備置場所を記載することが必要になります。
登録免許税
登録免許税が金6万円となっていますが、資本金の額が1億円以下の場合は、役員変更分が金1万円となり、合計で金4万円になるのは、監査役の場合と同じです。
会計監査人の就任
登記の事由 会計監査人の変更
会計監査人設置会社の定めの設定
登記事項 令和6年6月30日会計監査人G就任
同日会計監査人設置会社の定め設定
登録免許税 金6万円
添付書類 株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
就任承諾書 1通
公認会計士であることを証する書面 1通
委任状 1通
解説
大会社や、大会社以外でも監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社は会計監査人を置く必要があります。
もっとも、それ以外の会社でも、監査役を置く場合は、任意に会計監査人を置くことができます。
資格
会計監査人になるには、公認会計士または監査法人の資格が必要です。
そのため、公認会計士が会計監査人に選任された場合は、公認会計士であることを証する書面が添付書面として必要になります。
また、監査法人が選任された場合は、会計参与の場合と同じく、登記事項証明書が必要です。
申請先の登記所と同一管轄区域内に監査法人がある場合に登記事項証明書が不要であることや、会社法人等番号の記載によって登記事項の添付省略ができることも会計参与と同じです。
登録免許税
登録免許税が金6万円となっていますが、資本金の額が1億円以下の場合は、役員変更分が金1万円となり、合計で金4万円になるのは、監査役や会計参与の場合と同じです。