株式会社(非公開会社で取締役会非設置会社)の設立登記

12月の司法書士会の研修も迫ってきました。

今回は知識の確認を兼ねて設立登記の復習をしていこうと思います。

知識の確認と言っても、まったく無駄なことはしたくありません。

おそらく将来的に私が依頼されることが多いのは、非公開会社で取締役会非設置会社の場合ではないかと思うので、それを想定した設立登記を想定してみました。

なお、現在私は司法書士有資格者であり未登録なので、法律相談をしていないことをご理解ください。

目次

設立登記において申請書に記載すべき事由

株式会社の登記の申請書については、次の事項を記載し、申請人の代表者又はその代理人が記名押印することとされています(商業登記法17条2項)。

  • 申請人の氏名及び住所、申請人が会社であるときは、その商号及び本店並びに代表者の氏名又は名称及び住所(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者の氏名及び住所を含む。)
  • 代理人によつて申請するときは、その氏名及び住所
  • 登記の事由
  • 登記すべき事項
  • 登記すべき事項につき官庁の許可を要するときは、許可書の到達した年月日
  • 登録免許税の額及びこれにつき課税標準の金額があるときは、その金額
  • 年月日
  • 登記所の表示

本店所在地における登記申請書の例

法務局のホームページを見ると、設立におけるいくつかの申請書の例があります。

私のページでは私が請け負うことが予想される非公開会社の取締役会非設置会社を想定していますが、それ以外の設立登記については、法務局のページを参照することをお勧めします。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#anchor1-1

非公開会社の取締役会非設置会社の本店所在地における登記申請書についてはこんな感じです。

商号 ABC株式会社

本店 千葉県松戸市松戸〇丁目〇番地〇号

登記の事由 令和6年7月1日発起設立の手続き終了

登記すべき事項 別紙のとおり

課税標準金額 金100万円(資本金の額)

登録免許税 金15万円

添付書類 定款      1通

     発起人の同意書 1通

     発起人の議決権の過半数の一致があったことを証する書面 1通

     就任承諾書   3通

     本人確認証明書 1通

     印鑑証明書   2通

     払い込みがあったことを証する書面 1通

     (資本金の額の計上に関する証明書 1通)

     (設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書 1通)

     委任状     1通

上記の通り登記の申請をする。

令和6年7月8日

                                 千葉県松戸市松戸〇丁目〇番地〇号                  

                                           申請人 ABC株式会社

                                  千葉県松戸市五香〇丁目〇番〇号

                                          代表取締役 A

                                千葉県松戸市新松戸〇丁目〇番〇号

                                       上記代理人 何某 印

                                (電話番号○○〇‐○○〇‐○○○○)

松戸法務局御中

「発起手続きの終了」については、おそらく疑問に思われる方がいると思うので説明します。

この「発起手続きの終了」の日は、記載する日付は、次のうち遅いほうの日付です。

  • 資本金の払込みが完了した日(取締役がおこなう出資の履行調査が終了した日)
  • 公証人によって定款が認証された日

登記申請日ではありません。

添付書面の解説

定款

まず定款ですが、定款は公証人の認証を受けたものでなければなりません。

定款が電子認証の場合は、電子認証が必要となります。

発起人全員の同意書

発起人全員の同意書ですが、以下の事項については法律上、発起人全員の同意があることが必要なため添付することが必要となります。

  1. 設立時発行株式に関する次の事項の決定(会社法32条)
    • 発起人が割当を受ける設立時発行株式の数
    • 引き換えに払い込む金銭の額
    • 会社に出資された財産の額の一部を資本金としない場合には、成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
    • 種類株式発行会社において、定款に株式の内容の要綱を定めた場合には、その具体的内容
  2. 発行可能株式総数

本来は募集株式の場合には、設立時募集株式に関する事項の決定(会社法58条)も必要なのですが、今回は非公開ぎしゃで取締役会非設置会社の場合を想定しているので、この部分は他の部分に譲ります。

発起人の議決権の過半数の一致があったことを証する書面

設立時取締役及び設立時監査役の選任には、発起人の議決権の過半数の一致が必要なので、かかる事項を証明するために必要となります。

就任承諾書

非公開会社で取締役会非設置会社の場合は、設立時取締役及び設立時監査役の就任承諾書が必要となります。

印鑑証明書

非公開会社で取締役会非設置会社の場合は、設立時取締役の就任承諾書に、市区町村長の作成した印鑑証明書が必要となります(商業登記規則61条4項)。

このケースでは取締役A及びBの印鑑証明書が必要になります。

本人確認証明書

設立時取締役及び設立時監査役に要求されます(商業登記規則61条7項)。

設立時取締役が印鑑証明書を提出している場合は不要となります(商業登記規則61条7項但書)。

その場合は、設立時監査役の本人確認証明書のみで足ります。

このケースでは監査役CがいるのでCの本人確認証明書が必要となります。

払い込みがあったことを証する書面

具体的には以下のものが該当します。

  • 払込取扱期間の作成した払込金受入証明書
  • 設立時代表取締役の作成にかかわる払込取扱期間に払い込まれた金額を証明する書面に、次の書面のいずれかを合鐵したもの(条文には設立時執行役の場合も記載いされているがここでは省略)。
    • 払込取扱機関における口座の預金通帳の写し
    • 取引明細書その他の払込取扱機関が作成した書面

資本金の額の計上に関する証明書

これは金銭のみの出資の場合は設立段階では省略できます。今回は金銭のみの出資を想定しているため省略しました。

もっとも現物出資があった場合は、資本金の額の計上に関する証明書を省略することはできません。

設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書

定款に変態設立事項の記載があった場合で、検査役が選任されていない場合に必要となる場合があります。

今回想定してる会社は、金銭のみの出資のため、かかる調査報告書は不要となります。

登録免許税

登録免許税は資本金の額に1000分の7をかけた額になります。

もっとも、かかる金額が金15万円にみたない場合は、金15万円が登録免許税となります。

別紙の例

司法書士試験の勉強では、申請書に設立に関する登記事項をすべて記載しますが、実務に関係する本を読むとCD-Rなどに記録することがほとんどのようです。

ここでは別紙に記載される登記事項の一例を書くにとどめておきます。

再度申し上げますが、ここで想定しているのは非公開会社で取締役会非設置会社の場合です(取締役及び代表取締役2名、監査役1名)。

商号 ABC株式会社

本店 千葉県松戸市松戸〇丁目〇番地〇号

公告をする方法 官報に掲載してする

目的 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。

1. 各種商品の販売、輸出入及び仲介業務

2. 電子商取引(EC)の運営及び関連する業務

3. 前各号に付帯関連する一切の業務

発行可能株式総数 1000株

発行済株式の総数 100株

資本金の額 金100万円

株式譲渡制限に関する規定

当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する。

役員に関する事項

取締役 A

取締役 B

千葉県松戸市五香〇丁目〇番〇号 

代表取締役 A

千葉県市川市本八幡〇丁目〇番〇号

代表取締役 B

監査役 C

監査役設置会社に関する事項 監査役設置会社

登記記録に関する事項 設立

別紙ではこのように記載することになります。

まとめ

今回は復習の意味もかねて、非公開会社で取締役会非設置会社の発起設立の登記について書いてみました。

私は、司法書士登録をした後に仕事をする場合は、スモールビジネスを行おうとする方々のために設立登記をしたいと考えています(もちろんお金はいただきます)。

現在、小予算で起業される方が増えています。

そういった方々の役に立つことが、日本社会を発展させることにもつながると感じています。

それ以外にも、社団法人やNPO法人の設立などにも興味があります。

設立登記の仕事を通じて、社会の発展に役立つこと事が私の願いです。

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