日本郵便との委託停止を検討:ヤマト運輸の狙いと物流業界について

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ヤマト運輸と日本郵便の協業見直し

ヤマト運輸が、小型の薄型荷物「クロネコゆうパケット」の配達を委託する日本郵便に対して、委託の停止を打診したという記事が読売新聞オンラインに掲載されています。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20241213-OYT1T50204/

ヤマトと日本郵便は、メール便と薄型荷物について、集荷は各社で行いつつ、配達先の郵便受けに 投函
とうかん
 する業務を日本郵便が引き受けることで2023年6月に合意したのですが、それからわずか1年半程度で、見直しを迫られたという事になります。

これは業界内でもかなり話題になっているのではないでしょうか。

見直しの背景には、クロネコヤマトの業績悪化があると言われています。

ヤマト運輸がこのような委託停止を検討する背景には、経営の悪化があります。

同社の親会社であるヤマトホールディングスは、2024年9月中間期に5年ぶりに赤字へ転落しました。

その原因は、ネット通販市場の成長鈍化に加え、人件費や物流コストの増加があるとみられています。

さらに、日本郵便への委託料が重荷となり、経営に大きな負担を与えているとみられています。

私はかつて宅配事業者で事務をしていたことがあるのですが、「なんとなくわかる気がする…」と思ってしまいます。

最近、郵便物の減少が叫ばれていますが、実はこれはここ数年に限ったことではありません。

年賀状に関しては、十年以上前から「挨拶などメールで済ませればいい」という人は、年齢にかかわらずかなりいました。

郵政民営化の時は、「ヤマト運輸も郵便業務に参入して街中にポストを作ればいい」という話があったと思うのですが、実際は、郵便業務は郵便局が独占したまま、ヤマト運輸などの宅配業者が郵便事業に参入することはありませんでした。

まあ、郵便業務は利益が出にくいんですよね…。

最近になってはがきが85円に値上がりしましたが、一昔前は一枚52円でした。

郵便配達には配達員が必要で給与を支払う必要があります。

さらに、差し出してから配達するまで、様々な局を経て運送するわけです。

郵送のコストもかなりになります。

確かに、宅配物と一緒に郵便物も配達されるため、すべての費用が郵便物のコストから差し引かれるわけではありません。

しかし、1枚52円のはがきで、どれだけ利益を出せるかというと、「かなり難しい」というのが本音だと思います。

民営化以前はなんとか郵便システムを保っていたのですが、民営化になって、しかも、メールなどの通信技術の発達によって、郵便システムはかなり採算の悪いものになってしまっていたというのが事実だと思います。

クロネコヤマトは、日本郵便に対し、委託を始めた一部の地域で、輸送にかかる日数が以前より長くなっていると主張しているようですが、これは多くの人が実感していると思います。

昔に比べると、本当に郵便物が届くのが遅くなりました。

年賀状などの販売も減り、郵便局の利益がなかなか上がらない現状もあるのだと思います。

最近は千葉県松戸市から東京都まで郵便物を出すと、2日以上かかるようになりました。

昔は、前日の夕方5時くらいまでに郵便局にもっていけば翌日には届いていたのですが、もはや時代は変わりました。

私は、司法書士試験の模擬試験を通信で受けていたため、答案を郵便で出していたのですが、配達にかかる日数が増えたため「少し早めに出さないと採点されなくなるかも」と思い、いつも注意していました。

でもね…。2日か3日かかるのなら、電車でもっていってもいいような気もしていたのは事実です…。

ヤマト運輸と日本郵便の提携話は、郵便局にメール便の配送を委託することで、配達員にかかるコストを削減しようとしたのに、予想以上に郵便物の減少が激しく、採算が取れなかったという事もあるのでしょう。

ヤマト運輸も日本郵便も本当に大変だと思います。

運送事業について

宅配業者というのは、ヤマト運輸や佐川急便以外にもたくさんあります。

その事業を調べると非常に面白いことがわかります。

ヤマト運輸の親会社のヤマトホールディングスの定款を見ると、その目的に貨物自動車運送事業と貨物利用運送事業というものがあります。同じ記載は佐川急便の親会社のSGホールディングス株式会社にもあります。

まず、貨物自動車運送事業についてですが、国土交通省新潟陸運局によると、貨物自動車運送事業とは、「他人の需要に応じ、有償で自動車を使用して貨物を運送する事業」の事だそうです。

この貨物自動車運送事業には、一般貨物自動車運送事業一般貨物自動車運送事業特別積合せ特定貨物自動車運送事業貨物軽自動車運送事業と別れているのだそうです。

これだけではわかりにくいと思うので、一般貨物自動車運送事業と貨物軽自動車運送事業について、説明します。

ちなみに、全日本トラック協会のPDFで勉強させていただきました。

一般貨物自動車運送事業

ここでは、軽い紹介にとどめておくのですが、一般貨物自動車運送事業は許可制となっており、許可がなければ事業を行うことはできません。

そのため、定款の目的にも記載する必要があります。

もし記載していない場合は「違法業者」とみなされるので、これから運送業に参入される方は注意が必要です。

さらに、事業を開始する要件として、① 営業所 ② 車両数 ③ 事業用自動車④ 車庫 ⑤ 休憩・睡眠施設 ⑥ 運行管理体制などについて、一定の基準を満たす必要があります。

いくつかを紹介すると、②車両数については、「最低車両台数5台を備える必要がある」などの条件があります。

また、③事業用自動車についても、「計画車両の大きさ、構造などが輸送する貨物に適切であること」等の条件があります。

それ以外にも、車を置いておくための車庫なども備える必要があり、それなりの規模が必要なことがわかると思います。

貨物軽自動車運送事業

貨物軽自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を利用して貨物を運送する事業のことだそうです。

輸送能力や事業規模も小さいことが想定されているため、一般貨物自動車運送と比較すると、輸送の安全を確保するのに最低限必要な規制となっているといいます。

時折宅配の荷物を積んだ業者さんを街中で見かけるのですが、ヤマト運輸のように大きなトラックで運搬している会社もあるのですが、一方で軽自動車などで配達している業者さんもあります。

私も、宅配業者の事務をしていた時、そういった方と日常的に会話をしていましたが、その方々の事業こそが「貨物軽自動車運送事業」に当たります。

貨物自動車運送事業に比べ、規模は小さいのですが、運送事業としての重要性は変わりません。

そのため、貨物軽自動車運送事業も許可制となっており、無許可での営業は違法となります。

定款にも「貨物軽自動車運送事業」ときちんと目的を入れる必要があります。

なぜ運送事業にこだわるか

私は来年2月か3月に司法書士登録を予定しているのですが、このブログでは運送事業についての記事が時折あります。

「なぜそこまで運送事業にこだわる?」「トラック野郎か?」という疑問もあると思います。

トラックの運転はできないですし、トラック野郎でもありません。

ただ、事務をしているときに、配達員の方々と日常的に接する機会がありました。

そのため、運送業界の方々の苦労については理解しているつもりです。

現在、物流2024年問題が騒がれていますが、この問題についてはかなり前から注目していました。

私は、将来的には司法書士としての業務以外に労務も取り扱いたいと思っています。

その際に、専門としてやりたいのが、小売業と運送業です(それ以外は全くやらないと言ってはいません)。

また、商業登記などで、設立や役員変更などで、運動業界の方々の力になることが鳴れればいいなと本気で思っています。

そのためには、まず、自分自身が司法書士としてのスキルを高めなければいけません。

少しでも信頼されるためにしっかりと学んでいきたいと思います。

これからも物流問題は注目していきたいと思います。

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