会社設立を検討している方にとって、最初の大きな決断のひとつが「取締役会を設置するかどうか」という機関設計の選択です。
この設計次第で、日々の業務運営や将来の成長戦略、さらには法的な手続きの負担にも大きな違いが生じます。
この記事では、東京都文京区湯島にある当司法書士事務所が、取締役会設置会社と非設置会社の違い、取締役や監査役の任期、そして会計参与の設置についても、法律的根拠に基づきわかりやすく解説いたします。
会社設立や商業登記をご検討中の方は、ぜひご一読ください。

取締役会とは何か?
取締役会とは、会社法上の機関のひとつで、会社の業務執行の決定や取締役の職務の執行の監督や代表取締役の選定及び解職を行う機関です(会社法362条2項)。
それ以外にも、一定の重要な事項については,慎重な意思決定をさせるため,取締役会の決議事項とされています(362条4項)。
中〜大規模の株式会社では、適切なガバナンスの構築や外部からの信頼確保のために取締役会の設置が一般的です。
取締役会設置会社の特徴
取締役会を設置する場合、少なくとも取締役が3名必要になります。
また、原則として監査役の設置も必要とされており、より厳格な経営体制が求められます(会計参与の設置により不要となる場合あり)。
意思決定は、定期的に開催される取締役会で多数決によって行われるため、重要事項についても公平性や透明性が確保されやすいというメリットがあります。
一方で、取締役の任期は原則として2年(332条1項)であり、定期的に役員変更登記を行う必要があるため、事務手続きの負担はやや大きくなります(※定款や株主総会決議によって短縮することは可能ですが、延長はできません)。
取締役会非設置会社の特徴
取締役会を設置しない会社、つまり取締役会非設置会社では、取締役は1名からでも問題ありません。
また、監査役の設置も法律上は任意となっており、非常に柔軟な運営が可能です。
意思決定の方法については、取締役が1名の場合はその取締役が単独で意思決定を行うことが可能です。
一方、複数の取締役がいる場合には、定款に特別の定めがある場合を除き、その過半数による決定が必要となります(会社法348条2項)。
取締役の任期については、基本的には取締役会設置会社と同様に2年とされていますが、非公開会社(株式の譲渡に制限がある会社)であれば、定款によって最大10年まで延長することが認められています(332条2項)。
これは、頻繁な役員変更登記の負担を軽減したい中小企業などにとって大きなメリットとなるでしょう。
もっとも、取締役の任期をあまり長く設定してしまうと、外部から「あまり活発でない会社なのでは」という印象を持たれることもあります。
また、解任をする際にトラブルが生じる可能性もあることには注意が必要です。

取締役会設置会社と取締役会非設置会社の違いをまとめると
取締役会設置会社と取締役会非設置会社の違いを表にまとめたのでご覧ください。
比較項目 | 取締役会設置会社 | 取締役会非設置会社 |
必要な取締役数 | 3名以上 | 1名から可能 |
監査役の設置 | 原則として必要(会計参与設置の場合は不要) | 任意 |
意思決定の方法 | 取締役会で多数決 | 取締役が過半数で決定(1名なら単独) |
任期の延長可否 | 原則2年(定款で短縮可) | 非公開会社なら最大10年まで延長可 |
組織の柔軟性 | 形式が整っており堅実 | 小規模企業向きで柔軟性が高い |
対外的信用 | 比較的高い | 規模や信頼性の印象は個別に異なる |
このように、取締役会の有無によって会社運営のスタイルや法的義務は大きく異なります。
取締役会設置会社は、組織としての信頼性が高く、対外的な信用を得やすい一方、設置・運用には一定の手間やコストがかかります。
逆に、非設置会社は柔軟で小回りの利く運営が可能であり、設立当初の企業やスモールビジネスに適しています。
どちらを選択するかは、会社の規模や成長戦略、株主構成などを踏まえたうえで慎重に判断する必要があります。
役員変更の登記忘れていませんか
いろいろ忙しいとついうっかりと取締役の辞任、重任などの役員変更登記を忘れることがあります。
これについては法務省も注意を促しています。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00091.html
株式会社の場合は、役員の任期満了から2週間以内に、役員変更の登記をする必要があります。
役員変更登記を忘れた場合は、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があるので注意してください。
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当事務所では、東京都文京区湯島を拠点に、東京23区はもちろん、千葉県(松戸市、柏市、市川市、船橋市など)、埼玉県(さいたま市、川口市など)、神奈川県(川崎市、横浜市など)の広い地域に対応しております。
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