【遺産分割前の預貯金払い戻し制度について】
相続が発生した場合、被相続人(亡くなった方)の財産は、原則として遺産分割が完了するまで相続人が自由に処分することはできません。
しかし、相続が発生すると、葬儀費用や被相続人の債務弁済、相続人自身の生活費など、早急に資金が必要となる場面も少なくありません。
以前は、相続人が単独で被相続人の預貯金を引き出すことができましたが、平成28年の最高裁判決により、遺産分割が完了するまで単独での預貯金払い戻しは原則禁止となりました。
これにより、遺産分割前に資金が必要な場合でも、自由に引き出すことができず、相続人にとって不便な状況が生じていました。

■ 改正法による「遺産分割前の預貯金払い戻し制度」
この問題を解消するため、相続人の小口資金需要に対応する新しい制度が導入されました。

この制度では、一定の範囲内で遺産分割前でも預貯金を払い戻すことが認められています。https://www.zenginkyo.or.jp/article/life/others/14668/
【払い戻し可能な金額】
払い戻しできる金額には、以下の制限があります。
- 各預貯金口座の3分の1に法定相続分を乗じた額まで払い戻し可能です。
- ただし、同一の金融機関から引き出せる上限額は150万円までになります。
例えば、被相続人が1,200万円の預貯金を残していた場合、相続人Aの法定相続分が2分の1であれば、1,200万円 × 1/3 × 1/2 = 200万円となります。
ただし、この場合でも上限額150万円までしか引き出すことはできません。
【払い戻し後の扱い:事例で解説】
払い戻しについては以下の2点に注意が必要です。
- 払い戻された預貯金は、遺産分割時に相続人が取得したものとみなされます。
- 払い戻し額が相続分を超過した場合、遺産分割の際に精算が必要となります。
制度の仕組みをより分かりやすくするため、架空の事例で説明したいと思います。

【事例】
被相続人Aさん(父)が亡くなり、相続人は配偶者Bさん(母)と長男Cさん、長女Dさんの3人です。
Aさんの預貯金は合計900万円あり、法定相続分は以下の通りです。
- Bさん:2分の1(50%)
- Cさん、Dさん:各4分の1(25%ずつ)
Bさんは、自己の生活費を工面するため、遺産分割前に預貯金の払い戻しを希望しました。
【払い戻し額の計算】
- 各口座の3分の1 × 法定相続分で計算
- 900万円 × 1/3 × 1/2(Bさんの法定相続分)= 150万円
Bさんは150万円まで単独で引き出すことができます。仮にBさんが150万円を引き出した場合、その金額は遺産分割時にBさんが取得したものとみなされ、最終的な遺産分割協議で考慮されます。
【遺産分割後の精算】
その後、3人で遺産分割協議を行い、預貯金の最終的な分割額が決まり、残りの預貯金750万円を3人で分割する形になりました。
この場合、Bさんの相続分が150万円を超過していれば、その分は他の相続人と調整されることになります。
■ 払い戻しの手続き
遺産分割前に預貯金を払い戻すには、金融機関に対して必要な書類を提出する必要があります。
【必要書類】
- 被相続人の死亡を証明する書類(戸籍謄本や除籍謄本など)
- 相続人の範囲を証明する書類
- 請求者の法定相続分を証明する書類

【注意点】
- 払い戻し請求権の譲渡や差し押さえは認められていません。
- 払い戻された預貯金は、遺産分割時の相続財産には含まれませんが、遺産分割の際にはその額が考慮されます。
■ 制度利用のメリットと注意点
この制度により、相続人は遺産分割が完了する前でも、一定範囲内で預貯金を引き出し、生活費や葬儀費用などの支払いに対応できるようになりました。
ただし、払い戻しには法的な制限があり、手続きにも時間がかかる場合があることには注意が必要です。
また、相続財産の分配に関わる重要な手続きですので、相続人間のトラブルを防ぐためにも専門家への相談が望ましいでしょう。

【FAQ(よくある質問)】
1. 遺産分割前に預貯金を引き出せる条件は?
相続人が単独で払い戻しを行う場合、各預貯金口座の3分の1に法定相続分を乗じた額が上限です。ただし、同一金融機関からの払い戻しは最大150万円までとなります。
2. 払い戻しに必要な書類は?
金融機関への払い戻し請求には、以下の書類が必要です。
- 被相続人の死亡を証明する戸籍謄本や除籍謄本
- 相続人の範囲を示す戸籍謄本など
- 請求者の法定相続分を証明する資料(遺産分割協議書がない場合は法定相続情報一覧図など)
3. 払い戻し後の預貯金は遺産分割の対象になる?
払い戻しされた預貯金は遺産分割の対象には含まれません。
ただし、払い戻された金額は、遺産分割時に相続人が取得したものとみなされるため、遺産分割の際には考慮されます。
4. 払い戻した金額が相続分を超えた場合は?
もし払い戻した金額が法定相続分を超過していた場合は、遺産分割時に精算されます。
最終的な遺産分割協議で調整されることになります。
5. 遺贈された預貯金でも払い戻しできる?
遺贈や特定財産承継遺言で指定された預貯金は、原則として払い戻しの対象外となります。
遺産分割の対象になる預貯金のみ払い戻し請求が可能です。
■ 栗栖司法書士行政書士事務所のご案内
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