はじめに|最初に感じた小さな違和感
父から渡された登記済証を手にしたとき、私は小さな違和感を覚えました。

通常、区分建物が関係する登記済証では、
最初に建物(区分所有建物)の表示、その後にその敷地(共有土地など)の表示が記載されることが多いものです。
もちろん、これは厳密なルールではなく、絶対にそうしなければならないわけではありません。
それでも、司法書士試験の勉強を通して「こういう順番が一般的」と刷り込まれていた私は、
「ん?なんでこの登記済証は土地が先なんだろう?」
と、少し不思議に思いました。
もっとも、違和感を抱きながらも、当時の私はそこまで深刻には考えていませんでした。
「まあ、書き方の違いくらいだろう」と、深く追及することなく手続きを進めることにしたのです。

抵当権抹消登記に向けて、登記事項証明書を取得
抵当権抹消登記を行うには、対象となる不動産の現在の登記情報を確認する必要があります。
そのため、私はまず建物の登記事項証明書を取得することにしました。

この時点では、特に大きな不安もありません。
手順通り、法務局で証明書を請求し、あとは登記原因証明情報(解除証書など)を添付して抹消手続きを進めればよい──。
そんなふうに、どこか楽観的に考えていたのです。
「共同抵当権」という記載を見つける
登記事項証明書を手にして、内容を確認します。
そこには、建物に設定されている抵当権の概要が記載されていました。
よく見ると、「共同担保」の文字が目に入ります。
共同担保──つまり、建物単体ではなく、その敷地の共有持分にも抵当権が設定されている、ということです。
区分所有建物では、敷地権(敷地利用権)と建物が不可分一体になっているケースも多く、
共同抵当権がついていること自体は、特に珍しいことではありません。
私は「ふーん、まあそんなものだろう」と軽く受け流し、次の作業に進もうとしました。

しかし、その後、衝撃の事実に気づく
ところが──。
登記事項証明書をさらに読み込んでいくうちに、私は違和感を覚え始めました。
「何かがおかしい。」

最初に感じた小さな違和感が、じわじわと大きくなっていったのです。
そうして、ある”重大な事実”に気づいた私は、思わず手を止め、焦り始めました。
一体、何がおかしかったのか?
抵当権抹消登記は、そう簡単にはいかないのかもしれない──。
(第3話へ続く)