【中小企業向け】新任取締役の就任登記とは?任期・選任要件・登録免許税まで司法書士がやさしく解説

会社経営において、取締役の交代や増員はよくあることです。中小企業などの非公開会社でも、新たに取締役を迎えた際には、法務局で「就任登記」を行う必要があります。

しかし、登記を怠ると**過料(数万円程度)**を科される可能性もあるため、早めの対応が重要です。本記事では、新任取締役の就任登記について、任期、選任のルール、登録免許税、必要書類などを司法書士が詳しく解説します。

目次

1. 新任取締役の就任登記とは?

取締役が新たに就任したとき、会社はその内容を法務局に届け出て、登記簿(登記事項証明書)に反映させる必要があります。これを「就任登記」と呼びます。

登記を怠ると、商業登記法に基づき**過料(一般に数万円程度)**が科されることがあり、会社の信用にも関わるため注意が必要です。

2. 登記が必要になる主なケース

  • 新たに取締役を増員する場合
  • 現職取締役の任期満了や辞任による交代
  • 定款変更で任期を短縮し、その結果として新任となる場合

特に、任期の短縮によって現任取締役が任期満了となり、新しい取締役が選任される場合は、見落とされがちなので注意が必要です。

3. 取締役の任期とその注意点(10年に延長できるがデメリットも)

非公開会社の取締役の任期は、原則として2年です。ただし、定款で最長10年まで延長することができます。

▶ 10年任期のメリット

  • 登記の頻度が減り、手間や費用を削減できる
  • 取締役の地位が、長期的に安定する

▶ 10年任期のデメリット

  • 登記情報が実態とずれたまま長期間放置されがち
  • 任期満了を忘れてしまい登記漏れ→過料リスク
  • 銀行・取引先から「登記が古い」と不信感を持たれる場合も
  • 10年に1回しか登記をしないため、登記のことを失念し休眠会社整理のための職権解散(12年に1度)を受ける可能性がある
  • 途中で役員を解任した場合、「正当理由」がないと、残りの期間の役員報酬を支払わなければいけなくなる

そのため、登記を怠らない自信がない限りは2~4年程度の任期を設けるのが無難です。

4. 取締役に就任できない人とは?【欠格事由】

会社法第331条第1項により、以下の者は取締役になれません(欠格事由)

  • 法人(取締役は自然人に限られます)
  • 会社法等の重大な法令違反により刑に処され、執行から2年を経過していない者
  • 禁錮以上の刑に処され、その執行を終えていない者(執行猶予中は除く)

以前は成年被後見人や被保佐人も取締役の欠格事由でしたが、2019年の会社法改正により、取締役になることが可能となりました。

取締役を選任する際は、本人の経歴をしっかり確認する必要があります。

5. 選任手続きのルール【中小企業(非公開会社)編】

非公開会社の場合、通常は株主総会の普通決議で取締役を選任します。

会社によっては株主総会の定足数について、決議を成立しやすくするために定款で排除されている場合も多いですが、役員選解任決議においては、定足数要件を、議決権を行使できる株主の議決権の3分の1未満にすることができないことに注意してください(会社法341条)。

なお、定款変更によって任期の短縮や人数の変更を行う場合には、特別決議が必要となることもあります。

6. 登記申請の期限と過料リスク

就任日から2週間以内に登記申請を行わなければなりません(会社法第915条)。
遅れると、**過料(一般に数万円)**が科される可能性があります。

7. 登録免許税はいくらかかる?

取締役の就任登記には、会社の資本金に応じて登録免許税がかかります。

資本金の額登録免許税(1件あたり)
1億円以下1万円
1億円超3万円

※複数人が同日付で同時に就任し、1つの申請書で登記する場合は、会社全体として上記いずれかの金額が合計額となります。

8. 就任登記に必要な書類一覧

  • 株主総会議事録(選任決議を証明)
  • 就任承諾書(本人の署名・押印)
  • 印鑑証明書
  • 委任状(司法書士が代理申請する場合)

株主総会議事録に取締役の就任承諾がある旨の記載がある場合は、就任承諾書の代わりに議事録を援用することが可能です。

もっとも、株主総会議事録の援用が認められるには、株主総会議事録に取締役の住所の記載があることが要件となります。

株主総会議事録は、登記所に保管され、閲覧対象となり、また、会社でも保管が義務付けられており、株主や債権者が閲覧することが可能です(会社法318条4項)

プライバシーの面から、議事録に住所を記載したくないという方も多いと思います。

そのため、当事務所としては、株主総会議事録の援用ではなく、就任承諾書の提出をおすすめしています。

また、取締役の中から代表取締役を定めない各自代表の場合については、議長及び出席した取締役が取締役選任決議をした旨の記載のある株主総会議事録に押印した印鑑の印鑑証明書が必要になります。

もっとも、株主総会議事録に、変更前の代表取締役が登記所に提出した印鑑が押印されている場合は、記名押印があれば足り、全てのものに印鑑証明書は不要となります。

9. 司法書士に依頼するメリット

  • 法的に正確な書類を短時間で作成可能
  • 登記期限や書類不備による過料リスクを回避
  • 必要に応じて定款の確認・修正もサポート

まとめ|新任取締役の登記は早めに、正確に

新任取締役の就任登記は、2週間以内の申請が法的義務です。
資本金や任期、欠格事由といった法律面にもしっかり配慮しないと、思わぬトラブルにつながることもあります。

スムーズな会社運営のためにも、司法書士のサポートを受けて確実に対応しましょう。

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