昨日司法書士試験に合格したため、めでたく司法書士有資格者となりました。
12月からは司法書士会の研修があるのですが、自分に対する知識の再確認も含め、不動産登記や商業登記などについて書いていきたいと思います。
なお、この記事は法律上の相談を受けることを目的にしていません。一般社団法人や一般財団法人の設立等についての相談は、司法書士事務所にするようにお願いします。
一般社団法人の定款記載事項
ここからは、一般社団法人の設立について述べていきたいと思います。
まず定款の作成についてです。
一般社団法人の定款について、以下の事項については絶対的記載事項とされていることに注意してください。
一つでもかければ無効となります!
- 目的
- 名称
- 主たる事務所の所在地
- 設立時社員の氏名又は名称及び住所
- 社員の資格の得喪に関する規定
- 公告方法
- 事業年度
目的
まず目的についてですが、一般社団法人については事業の公益性は問わないとされています。
そのため、公益事業以外に同窓会やPTAなどでも一般社団法人になれますし、その活動を目的に記載することはできます。
また、収益事業も可能です!
ただ、一つだけ注意してほしいのが、一般社団法人では剰余金の分配をすることができないということです。
もし、一般社団法人の目的として社員,設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款で定めた場合、その定めは無効となります。
名称
次に名称ですが、一般社団法人は、その名称中に「一般社団法人」という名称を必ず用いなければなりません(法5条1項)。
また、一般社団法人は、その名称中に一般財団法人であると誤認される恐れのある文字を用いることはできません(法5条2項、3項)。
この法律の規定に反した場合は、20万円以下の過料に処せられます(法344条1号・2号)。
さらに、一般社団法人の「名称」及び「主たる事務所の所在場所」が他の一般社団法人のすでに登記した「名称」及び「主たる事務所の所在場所」と「同一」である場合は、当該名称を登記することはできません(法330条、商業登記法27条)。
この点にも注意が必要です。
主たる事務所の所在地
これはわかると思うのですが、活動する拠点となる場所の事です。会社で言えば本社の所在場所ですね。
この主たる事務所の所在場所については、最小行政区画(市区町村)までの記載で足ります。
もっとも、最小行政区画までの記載に留めた場合は、定款作成と同時か、定款作成後に、設立時社員によって番地まで決定しておく必要があることに注意が必要です。
設立時社員の氏名又は名称及び住所
社員には法人もなることができます。その場合は法人の名称と住所の記載が必要となります。
社員の資格の得喪に関する規定
この点に関してはあまり説明はいらないかと思いますが、社員となる資格や、どういった場合に退社事由となるかなどについて記載します。
公告方法
法律上認められている公告方法は以下の4つがあります。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告(公告方法のうち、電磁的方法により不特定多数の者が公告すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって法務省令で定めるものをとる方法をいう。以下同じ。)
- 前三号に掲げるもののほか、不特定多数の者が公告すべき内容である情報を認識することができる状態に置く措置として法務省令で定める方法
事業年度
これは株式会社における決算日と同じものですね。
一般社団法人は各事業年度に係る計算書類、事業報告、その他付属明細書を作成する必要があります(法123条2項)。
そのため事業年度の記載が必要となります。
一般社団法人の組織
一般社団法人には、最低限必要な機関と、任意で設置可能な機関が存在します。
定款作成後の注意点
最後に、定款を作成した場合は公証人の認証が必要となることに注意してください。
公証人の認証がない場合、定款の効力が生じないこととなります。
一般社団法人の登記事項
一般社団法人の登記事項としては以下のようなものがあります。
- 目的
- 名称
- 主たる事務所及び従たる事務所の所在場所
- 存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
- 社員総会の招集手続きを電子提供措置で行う旨の定款の定めがあるときは、その定め
- 理事の氏名
- 代表理事の氏名及び住所
- 理事会設置一般社団法人であるときは、その旨
- 監事設置一般社団法人であるときは、その旨及び監事の氏名
- 会計監査人設置一般社団法人であるときは、その旨及び会計監査人の氏名又は名称
- 一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名又は名称
- 役員等の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定め
- 非業務執行理事等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは、その定め
- 貸借対照表を電磁的方法により開示するときは、その内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの(情報が掲載されているウェブページのアドレス)
- 公告方法
- 公告方法が電子公告であるときは、次に掲げる事項
- 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
- 第三百三十一条第二項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め
一般社団法人設立登記申請書(理事会設置一般社団法人の場合)
この申請書はあくまで私が法務省などのページを参考に作成したものです。
実際の一般社団法人の設立登記申請書は、その社団法人の形態によってさまざまです。
ご自身が一般社団法人を設立される方は、ぜひお近くの司法書士に相談をされることをお勧めします。
一般社団法人設立登記申請書
1.名称 一般社団法人○○会
1.主たる事務所 東京都港区○○一丁目1番1号
1.登記の事由 令和〇年5月15日設立の手続き終了
1.登記すべき事項 別紙のとおり
1.登録免許税 6万円
1.添付書類
⑴ 定款 1通
⑵ 設立時理事が設立時代表理事を選定したことを証する書面 1通
⑶ 設立時理事、設立時監事及び設立時代表理事の就任承諾書 〇通
⑷ 設立時代表理事の印鑑証明書 〇通
⑸ 本人確認証明書 〇通
⑹ 設立時会計監査人した場合は以下の書面
① 設立時会計監査人の選任に関する書面 1通
② 就任承諾書 1通
③ 公認会計士であることを証する書面(法人の場合は登記事項証明書)1通
⑺ 委任状 1通
登記期間
一般社団法人の設立の登記は、主たる事務所の所在地において次に掲げる日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならないとされています(法301条1項)。
- 設立時理事等の調査が終了した日(法20条1項)
- 設立時社員が定めた日
登録免許税
主たる事務所の所在地においては、一律6万円となっています。
一般社団法人の機関について
一般社団法人の必要的機関と任意的機関について
一般社団法人では、社員総会と理事が必要的機関とされています。
理事会、監事、会計監査人は任意的機関です。
いずれも、社員総会の普通決議で選任できます。
ちなみに、株式会社における取締役会設置会社と同じで、理事会設置会社においては代表理事を選任することが必要です。
なお、理事会を設置した場合または、会計監査人を設置した場合は、監事を置くことが必要となるので注意してください。
また、理事会設置一般社団法人においては、理事が3人以上必要であることも注意してください。
役員の資格について
まず、理事と監事については以下のものは役員になることはできないとされています(法65条1項)。
- 法人
- 一般社団・財団法人法もしくは会社法の規定に違反し又は民事再生法等の罪を犯し、刑に処せられたもの
- 上記3以外の法令の規定に違反し、刑に処せられたもの
次に、会計監査人についてですが、会計監査人はその職務の専門性から、公認会計士又は監査法人であることが必要となります。
なお、資格制限ではないのですが、一般社団法人においては、その法人又はコ法人の理事・使用人との兼任は不可能とされています(法65条2項)。
この点も注意してください。
役員の任期
まず、理事の任期ですが、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結時までとなっています(法66条)。
次に、監事の任期ですが、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとなっています(法67条)。
また、会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時社員総会の終結の時までです。
添付書面について
設立の場合
以下は必要となる書面の一例とお考え下さい(事案によっては異なる場合があります)。
- 定款
- 設立時理事が設立時代表理事を選定したときは、これを証する書面
- 設立時理事、設立時監事及び設立時代表理事が就任を承諾したことを証する書面
- 設立時会計監査人を選任したときは以下に掲げる書面
- 選任に関する書面
- 就任承諾書
- 設立時会計監査人が法人であるときは登記事項証明書
- 当該と期初の管轄内に当該法人の主たる事務所があるとき、または、会社法人等番号を提供した場合は不要
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
⑤の印鑑証明書については誰の印鑑証明書が必要かに注意してください。
理事会設置一般社団法人においては、設立時代表理事の就任承諾書に押した印鑑についての印鑑証明書が必要となります。
理事会非設置一般社団法人においては、設立時理事の就任承諾書に押した印鑑についての印鑑証明書が必要となります。
また、⑥の本人確認証明書についてですが、これには例外があり、当該設立時役員のうち、市区町村長作成の印鑑証明書を添付するものは除かれます。
なお、本に確認証明書としては以下のものがあります。
- 住民票の写し(個人番号の記載のないもの)
- 戸籍の附票
- 市区町村長作成の印鑑証明書
以上のものについては、原本及びコピーを添付したうえで、原本・コピーの還付を受けることも可能ですし、コピーのみを添付することも可能です。
また、運転免許証のコピー(表裏両面をコピーする)、個人番号カードの表面のコピー(個人番号の記載された裏面のコピーの添付は厳禁)については、当該設立時役員本人が「原本と相違ない」と記載して、記名押印をする必要があります。
役員選任の場合
理事などの役員を株主総会で選任した場合は、社員総会議事録が添付書面となります。
なお、この社員総会議事録については、署名又は記名・押印は原則として不要とされています。
また、理事や監事が就任を承諾したことを示すために、就任承諾書が必要となります。
さらに会計監査人の場合は、就任承諾書に加え以下の書面が必要となります。
- 会計監査人が法人の場合
- 登記事項証明書(当該管轄区域内に当該法人の主たる事務所がない場合、会社法人等番号を提供した場合を除く)
- 会計監査人が法人でない場合
- 公認会計士であることを証する書面
今回はここまでにします。参考になれば幸いです。