今回は、発起設立、しかも、取締役会非設置会社における設立時取締役について記事を書いていきたいと思います。
この記事は以下のような方におすすめです!

- 株式会社設立を検討している方
- 設立時の取締役の仕組みや手続きに不安がある方
- 「発起人」と「取締役」の違いを正しく理解したい方
- 司法書士による設立サポートを検討している方
1. 設立時取締役とは?|定義と会社成立後との関係
設立時取締役とは、株式会社の設立に際して、将来の取締役となる者を指します。また、設立時代表取締役とは、会社の設立に際して代表取締役となる予定の者です。
これらは会社成立時に効力を持ち、会社が成立すると同時に、それぞれ自動的に「取締役」や「代表取締役」となります。
ただし、会社が成立するまでは法人格が存在しないため、設立時取締役や設立時代表取締役は、いずれも実質的な業務執行権限を持たず、取締役・代表取締役としての職務を行うことはできません。
2. 設立時取締役の選任方法と法的根拠
◾ 発起人が選任する義務(会社法38条)
会社設立にあたって、発起人は出資の履行を完了した後、遅滞なく設立時取締役を選任する義務があります(会社法38条1項)。
取締役以外の役員(監査役)を置く場合は、あわせて設立時監査役等の選任も必要です(同条3項)。
発起人が複数いて、設立時取締役も複数の場合は、設立時監査役を設置することも、あるかもしれないですね。
ただ、発起人が一人で、設立時取締役も一人の場合は、あまり設立時監査役を置くことはほとんど無いと思います…。
◾ 選任方法
設立時取締役は定款に定めることも可能です(会社法38条4項)。
定款の定めがない場合、発起人の議決権の過半数で選任することになります(40条1項)。
また、設立時取締役の人数ですが、今回私が想定している、取締役会非設置会社においては、取締役の人数に「何人以上」という制限はありません。
一人いれば大丈夫です。
3. 設立時取締役の権限と職務
設立中の株式会社においては、原則として会社の事務を執行する権限は発起人に専属しています。
一方、設立時取締役や設立時代表取締役は、会社成立前には業務執行を行うことができません。
「取締役」「代表取締役」という名前があるので「なんでも出来そう」と思いがちですが、この点には注意が必要です。
会社設立前に強い権限を持つのは、設立時取締役ではなく、発起人です!

▶ 唯一の権限:調査義務(会社法46条)
設立時取締役に課されている職務は、以下のような調査義務に限られます。
- 出資の履行が完了しているかどうかの調査(46条1項3号)
- 設立の手続が法令や定款に違反していないかの調査(46条1項4号)
さらに、調査の結果、違法または不当な事項があると認めた場合には、発起人に対してその旨を通知する義務があります(46条2項)。
👉 この調査義務こそが、設立時取締役が担う唯一の法的権限といえます。
4. 設立時取締役と発起人の違いとは?
「発起人」と「設立時取締役」は混同されやすいですが、その役割は明確に異なります。
区分 | 発起人 | 設立時取締役 |
---|---|---|
定義 | 会社設立手続きを行う者 | 設立時に将来の取締役となる者 |
主な役割 | 定款作成・出資の履行 | 設立手続の調査・成立後の業務執行 |
権限 | 設立中の事務執行権限を有する | 原則として権限なし(調査権限のみ) |
登記の有無 | 登記に記載されない | 登記簿に「取締役」として記載 |
兼任の可否 | 兼任可(発起人=取締役も多い) | 兼任可(個人設立で一般的) |
ただ、個人で会社を設立される方の場合、発起人と設立時取締役を兼ねる方のほうが多いと思います。
5. 設立時取締役の解任・解職も可能(42~45条)
会社が成立する前であれば、設立時取締役を発起人の議決権の過半数で解任することが可能です(会社法42条・同43条1項)。

よくある質問(FAQ)
- 設立時取締役とは通常の取締役とどう違うのですか?
-
設立時取締役は会社設立時に選任される「予定の取締役」です。会社成立と同時に正式な取締役となりますが、それまでは業務執行権限はありません。
- 設立時取締役にはどんな権限がありますか?
-
権限は限定されており、「出資の履行状況」や「設立手続の適法性」についての調査義務のみです(会社法46条)。それ以外の業務は発起人が行います。
- 発起人と設立時取締役は同じ人でもよいですか?
-
はい、兼任は可能で、多くの小規模な会社設立では発起人=設立時取締役=代表取締役となるケースが一般的です。
- 設立時取締役はあとから解任できますか?
-
はい、会社成立前であれば、発起人の議決権の過半数で解任可能です。
- 司法書士に依頼すると何をしてくれますか?
-
定款作成から登記申請まで、面倒な手続きをすべて代行できます。電子定款認証を使えば印紙代も節約可能。確実でスピーディな設立をサポートします。
まとめ|設立時取締役の正しい理解でスムーズな法人設立を
株式会社を設立する際には、発起人と設立時取締役の違いを明確に理解し、法的手続を正確に進めることが重要です
特に「取締役」としての権限が発生するのは、会社が登記により成立してからである点は注意が必要です。
会社設立でお悩みの方は、ぜひ【栗栖司法書士行政書士事務所】までご相談ください。
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