時効の更新・猶予

今回も司法書士試験の復習を兼ねて記事を書いていきます

目次

時効の基本概念

まず、時効とは、一定期間が経過することで、ある権利が消滅したり取得したりする法律上の効果です。

たとえば、借金の返済を何年も請求されなければ、債権が消滅する「消滅時効」、逆に土地を長年所有し続ければその所有権が認められる「取得時効」などが存在します。

時効の更新と完成猶予

民法には、時効の完成を防ぐために「時効の更新」と「時効の完成猶予」という仕組みが設けられています。

それぞれの条文を示しながら、事例を用いて説明します。


1. 時効の更新(民法第147条)

時効の更新とは、一定の行為が行われると、それまでの時効期間がリセットされ、新しい時効期間が再び開始することを指します。たとえば、「裁判上の請求」や「差押え」などが行われたとき、時効が更新されます。

第147条(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

① 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 裁判上の請求

二 支払督促

三 民事訴訟法第275条第1項の和解又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停

四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

② 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

事例:太郎さんが花子さんに100万円を貸したとします。

もし太郎さんが10年間、花子さんに返済を請求しなければ、その債権は時効によって消滅する可能性があります。

しかし、太郎さんが9年目に「返済してほしい」と裁判で請求した場合、この「裁判上の請求」によって時効が更新され、再び10年間の時効期間がスタートします。

これにより、太郎さんの債権がすぐに消滅することはなくなります。


2. 時効の完成猶予(民法第147条~第153条)

時効の完成猶予とは、特定の事情によって時効が一時的に停止し、その間は時効が進行しないことを指します。

これには、以下のような場合が含まれます。

第150条(催告による時効の完成猶予)

① 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

② 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)

① 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。

一 その合意があった時から一年を経過した時

二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時

三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時

② 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。

③ 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。

④ 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。

⑤ 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。

事例

太郎さんが花子さんに100万円を返してもらいたいのですが、花子さんが「どうしてもあと1年待ってほしい」と頼み、太郎さんも「それなら1年待つよ」と書面で合意したとします。

この場合、太郎さんと花子さんが時効の完成猶予に同意したため、時効の完成が1年間猶予されます。

これにより、花子さんはあと1年返済を延ばすことができ、太郎さんもその間は時効を理由に債権が消滅することを心配せずに済みます。

時効の完成猶予又は更新の効力の及ぶ者の範囲

第153条(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)

① 第147条又は第148条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

② 第149条から第151条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

③ 前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。


時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲についてですが、「当事者及び承継人」に限られています。

全く無関係の人についてまで及ぶのではないことに注意してください。

まとめ

再度に、時効の更新と完成猶予についてもう一度まとめておきます。

  • 時効の更新:特定の権利行使(裁判など)で時効がリセットされ、新たに時効期間がスタートする制度。
  • 時効の完成猶予:当事者の合意や不可避の事態により、時効が一時的に止まり、時効の完成が猶予される制度。

今年の司法書士試験が終わってから、4か月以上たちます。

その間過去問を全く解いていないので知識がなくなる一方です。

こういう形で知識を再確認することは、自分にとっては有益だと思います。

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