令和6年度司法書士試験択一午前の部(第16問から第18問)

これは、令和6年度司法書士試験択一午前の部の第16問から第18問について、実際に受験した際の体験を振り返り、解答に至るまでのプロセスを再現した記事です。

本記事では、解答方法や思考過程に焦点を当て、司法書士試験に挑む受験生が合格者を身近に感じられる内容を目指しています。

なお、正確な解説については、各予備校の出している過去問集を参考にしてください。

目次

第16問

解説

実は、午前の部の問題をスキャンしたときにデータ保存がうまくできず、保存されていないデータが数問あったのですが、この問題以降はしっかりと残っていたので、かなり正確な解説ができると思います。

まず、問題が「誤っているもの」だったので、問題文にバツをつけています。

ケアレスミス防止のために必要な作業です。

次にアですが、これは少し不安だったので「他の肢を見て判断しよう」と思い、△にしています。

イの肢ですが、これは過去問にもあったと思います。

詐害行為取消権は、債務者の資力が回復した後は行使できません。そのため、しっかりと〇を付けました。

次にウですが、これは間違っていますよね。

ただ、これちょっと難しいと思います。

改正前の詐害行為取消権に関する判決では、目的物の価格いかんにかかわらず、債務者に詐害の意思があれば詐害行為となるという判例がありました。

ただ、改正後には新たな条文が設けられています。

第424条の3

① 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。

二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

② 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。

二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

第424条の4

債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第424条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。

特に424条の4を知っていると、正しいと判断してしまいがちですよね。

この424条の3と424条の4については、少しわかりにくいのですが、424条の4は,424条の3による詐害行為取消請求が認められない場合であっても,過大な代物弁済部分に限って,424条と同一の要件で取消請求を認める規定なのだそうです。

そのため,過大な代物弁済行為が行われた場合でも,424条の3の成立要件を満たす限りは,同条を根拠に代物弁済行為全体が取り消されることになるということです。

これは日本加除出版から出されている、「行為類型別 詐害行為取り消し訴訟の実務」という本に書いてありました。

私は試験当時は「代物弁済は取り消せるだろう」と安易に考えていたのですが、意外に複雑な問題ですね。

あと、後で述べますが、これはアの答えにもなっているんですよね…。

次にエなのですが、これは正解です。ほとんどの人がわかると思います。

第424条の5

債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その転得者が受益者から転得した者である場合その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。

二 その転得者が他の転得者から転得した者である場合その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき

下線部分に注意してください。

さらにオですが、これは有名な判例ですよね。正解です。ほとんどの人がわかると思います。

最後にアなのですが、これは先ほどの423条の3を見るとわかります。

第424条の3

① 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。

二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

② 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。

一 その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。

二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

アの肢は、1項の部分だけ詐害行為取消請求できるとしているので、間違いです。

2項の部分でもできます。

こうやってみると、アとウの肢は少し難しいですよね。ここまで条文総合の関係を把握するのは過去問の解説中心の勉強をしていた私には少し大変だったと思います。

でも、イ、エ、オが正解なので、結局アとウが間違いとなり1番が正解となります。

条文を知っていればキチンと判断できるのでしょうが、そうでなくても消去法でなんとか正解した方はかなり多いのではないでしょうか。

第17問

解説

この問題はよく覚えています。

最初解いているときは「なんだこれ?あまりよくわからないんだよな」と思っていました。

とりあえず、問題が「誤っているもの」としていたので、ケアレスミス防止の観点から問題文にバツを付けました。

オは過去問か模試に出ていたと思います。なんとか正解と判断できました。

第465条の10

① 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 財産及び収支の状況

二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

② 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

③ 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

また、問題に面食らってかなり焦っていましたが、アも正しいことはわかりました。

第446条

① 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

② 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

③ 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

悩んだのはイとエです。

ウは、すぐにバツをつけています。

確定させるのは相続人に過大な負担をするのを防ぐためだと思います。条文があることも知っていました。

第465条の4

① 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。

三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

② 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

「法人は別」と考えました。

イとエですが、私は最初はイをバツにしました。

イについては「債務を重くしなければ大丈夫なのでは?」と最初見たときは感じたからです。

ただ、不安だったので、「後でもう一度考えよう」と思い、試験本番では先に進みました。

そして、すべてを解き終わってから「どういう事例があるのか」と考えました。

その時に思ったのが、イについては「債務者に過大な負担をさせない」というのが法の趣旨だと考えた場合、「主たる債務の利息等でなくとも、保証契約において同じような過大な負担をさせた場合は、債務者に対して過酷な求償がされるのではないか」ということです。

問題文の下に、保証人の上の部分に「カコクな求償」と書いてあるのはそういう意味です。

エについては正直よくわかりませんでした。

ただ、イが正解なのでエが間違っているに違いないと思い、本番では4番を正解にしました。

本番は時間との戦いなので、正直こういうことがあると思います。

第18問

解説

まず、問題が「正しいもの」となっているので、ケアレスミス防止のために問題文に〇をつけます。

アは間違いです。他人物贈与も有効ですよね。

イも間違い。履行が終わった部分については、書面によらない贈与でも解除できません。

第550条

書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

ウは普通に正解ですよね。

エについては、遺言との違いに注意したいところです。

オについては少しわからないところもありますが、この時点でオが正解なのはわかっています。

そのため、実質はあまり意味のない肢です。

ただ、試験本番では正解と判断するために、自分で根拠を探しました。

すると、問題の下に書いてあると思うのですが、甲建物は4000万円の価値があるとされていますが、実際の契約では10年間にわたり年200万円を支払うとしており、Bが2000万円を負担する契約です。

もし甲建物が3000万円の価値しかなくても、Bに損害はないですよね。

試験本番ではそう考え「正解」と判断しました。

おそらく、試験本番に私と同じことを考えた方はかなりの数いたのではないでしょうか。

正解は5番です。

まとめ

令和6年度の司法書士試験では民法は1問間違えただけですが、再度見てみると、いろいろと難しい問題も多いですね。

ただ、一つの肢がわからなくても、なんとか正解が出せるというのが民法のいい所です。

受験生の方は、必要以上に難しく考えることなく、過去問と答練若しくは模試の復習をしっかりやれば司法書士試験は大丈夫だと思います。

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