令和6年度司法書士試験択一午前の部(第19問から第21問)

これは、令和6年度司法書士試験択一午前の部の第19問から第21問について、実際に受験した際の体験を振り返り、解答に至るまでのプロセスを再現した記事です。

本記事では、解答方法や思考過程に焦点を当て、司法書士試験に挑む受験生が合格者を身近に感じられる内容を目指しています。

なお、正確な解説については、各予備校の出している過去問集を参考にしてください。

目次

第19問

解説

アの肢の検討

まず、問題文に「誤っているもの」とあるので、ケアレスミス防止のため、問題文にバツを付けます。

アについては、「間違っている」と思いました。条文がありますよね。

第670条

1 組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する。

2 組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができる。

3 前項の委任を受けた者(以下「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する。

ただ、最初の肢は慎重に答える必要があります。

万が一にも最初の肢で勘違いをすると、あとの肢も連鎖で間違えてしまいます。

そのため、私はよほどのことがない限りは、アの肢は最初は△にして、他の肢を検討します。

イの肢の検討

イも条文ですよね。

第667条の2

2 組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。

これは自信をもって〇をつけました。

普通に考えても「それはないだろう」と思うと思います。

ウの肢の検討

ウも条文ですよね。これも〇にしました。

第677条

組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができない。

ちなみに、この条文と勘違いする人がいるので注意が必要です。

第675条【組合の債権者の権利の行使】

1 組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる。

組合の債権者は行使できますが、組合員の債権者は行使できません。

エの肢の検討

エも条文であり、これは知っていました。過去問でもあると思います。

第680条の2

1 脱退した組合員は、その脱退前に生じた組合の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。この場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、脱退した組合員は、組合に担保を供させ、又は組合に対して自己に免責を得させることを請求することができる。

ただ、アの肢がまだ△の状態なので、オの検討を先にするという意味で△にしています。

オの肢の検討

オは明らかな誤りです。これも条文があります。

第677条の2

2 前項の規定により組合の成立後に加入した組合員は、その加入前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負わない。

解答については、イとウが明らかに正しいため、正解は2と5に絞られるのですが、エも正しいという事で2を正解にしました。

こうやって見てみると、私の記号の使い方は結構適当だと思います。

条文や過去問で知っていても、できるだけミスをしたくないという事から、慎重に解いているという事だと思います。

でも、時間はいつも30分以上余っています…。

第20問

解説

この問題は思い出深いです。

実は私は、午前の部の問題を解き終わった時、2、3問を残して「あとは大丈夫」と思っていました。

そして、最後まで悩んだ問題のうちの一つがこの1問です。

ほかの問題と違い、4と5の肢に〇もバツもついていませんよね。

実は、アが正しいのはわかりました。これはほとんどの人がわかりますよね。

あと、オについてなのですが、これも最初は「間違っているんじゃないかな」と思いました。

私はこういう時に事例を思い浮かべるのですが、「いくら何でも、補助監督人と補助人で金額を合意して請求出来たら、高い金額を請求し放題じゃないか?」と思ったからです。

結果的にはこの考えが正しいのですが…。

エの肢については、「正しいのではないか」と思ったのですが、自信はあまりなかったです。

イについては最初は〇をつけていたのですが、実は最後に「もういいや」と思ってこれをバツにします。

そして、3番に〇をつけ間違えました。

民法で間違えたのはこの問題だけです。

ただ、この時はこの問題を間違えても「大丈夫」と思っていました。

模試でも択一の点数はいつも基準点を超えていましたし、仮にこの問題を間違えても「合格できる」という自信があったのでそれほど気にしていなかったです。

試験が終わり、採点をしたときも「やっぱりね」と思っていました。

なお、参考のために条文を挙げておきます。

この問題に出た条文

アの肢

第15条                        

2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

イの肢

第15条                        

1 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3 補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。

第17条

1 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。

2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。

4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第876条の9

① 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

② 第876条の4第2項及び第3項の規定は、前項の審判について準用する。

ウの肢

これは紛らわしいですかね。

成年後見人は財産管理をするため財産目録の作成が義務付けられています。

第853条 (財産の調査及び目録の作成)

1 後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、1箇月以内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。

一方で、保佐人・補助人の場合は、成年後見人と異なり、必ずしも被保佐人・被補助人の財産の管理権を有するとは限りません。

また,財産管理に関する代理権を有する保佐人・補助人であっても,その有する管理権の範囲は,成年後見人に比べ限定的でとされています。

以上より保佐人・補助人については,成年後見人の場合のように財産の調査,財産目録の作成に関する条文上の規定は設けられていないという事です。

この説明は私がいつも読んでいる書籍にはなかったので、いろいろ調べたのですが「実務成年後見法」という本に載っていました。

ただ、前橋家庭裁判所のQ&Aを調べたところ、財産管理について代理権を与えられた補助人は、財産目録の作成が必要だという事です。

https://www.courts.go.jp/maebashi/vc-files/maebashi/file/05hojoQA.pdf

これは実務上の必要性に基づくという事なのでしょうか?

エの肢

第876条の8

① 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求により又は職権で、補助監督人を選任することができる。

② 第644条、第654条、第655条、第843条第4項、第844条、第846条、第847条、第850条、第851条、第859条の2、第859条の3、第861条第2項及び第862条の規定は、補助監督人について準用する。この場合において、第851条第4号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。

第850条

後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

オの肢

第876条の10

① 第644条、第859条の2、第859条の3、第861条第2項、第862条、第863条及び第876条の5第1項の規定は補助の事務について、第824条ただし書の規定は補助人が前条第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。

第862条
家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。

第21問

解説

これもかなり迷った問題です。

解答欄に〇か×をつけていない部分があることからもわかると思います。

私は、こういう問題はできるだけ常識を働かせるようにしていました。

この問題の説明は順不同にさせてください。

オの肢

オの肢なのですが、これは「バツだろうな」と単純に判断してバツにしました。

これは条文があります。

第881条

扶養を受ける権利は、処分することができない。

注釈民法でも、「扶養請求権は,その放棄の許されないことをも含めて,その処分が禁止されるものと解するのが一般である」と書かれています。

そして、注釈民法では本条の趣旨については『要扶養者の生存維持を目的としたものであること,そして,この目的による制約の下での一身専属性をも併せて表明したもの』としています。

このことから、養育費などの支払いにおいて「一切請求いたしません」などと書かせたとしても、それは、民法881条で禁じられた「処分」に当たるため、効力を生じないということです。

ウの肢

これは少し紛らわしいですかね。私も図を書いて確認していました。

第877条

1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

特別の事情があるときに扶養義務を負担するのは3親等内の親族です。

兄弟姉妹の子供は3親等ではないですよね。

そのため、間違いになります。

アの肢

この肢は条文を「○○条」と言えるほど知ってはいないのですが、肢の内容から「恐らくそうだろうな」と分かると思います。

そのため〇にしています。

第879条

扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

エの肢

これも模試か答練で見たことがある気がしていました。

こういう時はいろいろと考えると答えが出るのですが、試験本番では「いくら扶養義務者の間で協議があったからと言って、何も知らない権利者が扶養義務者の一人に請求したとき『それ他の人に請求してよ』などと言われる筋合いはないだろう」と思いました。

エの肢の横に「なんで?知らんがな」と書いてあるのはそういう事です。

補足ですが、試験後に調べたところ仙台高裁56年8月24日の判例があるみたいです。

この判例は父母が離婚した場合の扶養義務者の負担について和解で合意したという事案ですが、仙台高裁はこの合意に対して、「右和解が養育料折半の趣旨で成立したとしても相手方に対しては何らの拘束力を有せず,単に扶養料算定の際しんしゃくされるべき一つの事由となるに過ぎない」として、権利者がこの合意に拘束されないとしています。

まあ、知っていれば解けるのでしょうけど知らなくても何とか本番では解けるかなと言った感じですかね…。

しかし、調べれば調べるほど奥が深いです。

イの肢

これも明確に条文はわからないですが、なんとなく正しそうですよね。

ちなみに、条文があります。

第880条

扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

アの肢が正解だとわかっているので、1か2が正解なのですが、エの肢が不正解だと思ったので1番に〇をつけました。

正解も1番です。

条文の大切さ

よく条文を読めと言われますが「○○条にある」とまで言えるほど読み込んでいる方はいないと思います。

ただ、「こんな条文あったよな」と分かる程度に読み込んでおけば大丈夫です。

それにしても民法は本当に条文が大事ですよね。

解説を書いていて思い知らされました。

まとめ

自分で調べることは本当に勉強になりますね。

私と同じでオンラインで勉強している方の役に立てばと思い始めたのですが、正直、自分の勉強にかなり役に立っています。

やはり、言われてやるのではなく、自ら進んで学ぶことは大事なのだと実感しました。

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