令和6年度司法書士試験択一午前の部(第22問から第24問)

これは、令和6年度司法書士試験択一午前の部の第19問から第21問について、実際に受験した際の体験を振り返り、解答に至るまでのプロセスを再現した記事です。

本記事では、解答方法や思考過程に焦点を当て、司法書士試験に挑む受験生が合格者を身近に感じられる内容を目指しています。

なお、正確な解説については、各予備校の出している過去問集を参考にしてください。

目次

第22問

解説

本来なら問題文が「正しいもの」とあるので、ケアレスミス防止のために問題文に〇をつけるところです。

しかし、この問題は「絶対に間違えない」という自信があったので、それもやっていません。

アの肢

アの肢は条文自体を明確に記憶していなくても「証人がいるのに公正証書を無効にする必要はないんじゃないの?」くらいのことは、現場で考えました。

そのため、バツにしました。

試験後に注釈民法で調べたのですが、これは判例があり、最高裁、公正証書遺言について、証人・立会人としての欠格者が事実上の立会人として遺言作成の場に同席していても、特段の事情のない限り、遺言が無効となることはないという判断を示しています(最判平13・3・27判タ1058・105)。

イの肢

これは完全に間違っていますよね。ほとんどの方がわかると思います。

ウの肢

ウは財産目録ですが、財産目録はパソコンで作成することができます。しかし、その代わりに署名と押印が必要です。

第968条

1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

エの肢

条文そのものですね。昔、水泳の北島康介選手がオリンピックで言ったセリフを使うと「なんも言えねえ」と言った感じでしょうか。

第973条

① 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師2人以上の立会いがなければならない。

オの肢

オは普通に考えて「それはないでしょ」と思いバツにしました。

注釈民法で調べたところ、最高裁は、全文を自書し署名・押印した日から8日後にその日の日付が記載されたしごんしょについて、「特段の事情のない限り,右日附が記載された日に成立した遺言として適式なものと解するのが,相当である」(最判昭52・4・19家月29・10・132)と判事しています。

注釈民法は本当に役に立ちます。

ちなみに、ウとエが正しいので、正解は4番です。

第23問

解説

まず、問題文に「誤っているもの」とあるので、ケアレスミス防止のために問題文にバツを付けます。

この肢はアから順番に解かなかったので解いた順番に掲載します。

エの肢

エについては条文は知らないのですが、困った時は裁判所に頼むのが普通だと思ったので「多分そうだろう」と思いました。

しかし、自信がなかったので△をつけています。

第1050条

1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。

3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。

4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

1050条2項に書いてありますよね。

しかし、1050条って民法の一番最後の条文ですよね。

出題者は、「民法最後の問題は民法最後の条文で」とでも考えたのでしょうか?そこそこいいセンスだと思います。

オの肢

これも条文を知らなかったのですが「恐らくそうだろう」と思いました。ただ不安があったので△にしています。

ただ、1050条4項にはしっかりと書いてあります。

第1050条

4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

アの肢

最終的に悩んだのはアとイとウの肢です。

私はこの3つの肢の文章に注目して正解を出しました。

アの肢では、Aの配偶者Bが問題になっています。BはAの相続人ですよね。

「相続人なら寄与分の中で考慮すればいいんじゃないの?」と考え「特別の寄与」で考慮する必要はないと思いバツにしました。

正直これは私の勉強不足なのでしょうが、試験当日はそうやって判断するしかありませんでした。

この点については、条文にしっかり記載されています。

第1050条

1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

私も条文は何度も読んだのですが、最後の条文という事もあって読み方が甘かったのでしょうね…。

イとウの肢

これは便宜上一緒に書きます。

イとウの肢では、対象者が相続人でないが、親族であることはわかると思います。

この時私が注目したのは、イの肢にある「無料で療養看護」という部分と、ウの肢にある「現金」の部分です。

普通に考えて、「寄与分」なのですから、何かしらの「寄与」があることが必要です。

しかも、それは法律上保護されるものである必要があります。

「現金」と「無料の療養看護」のどちらを法律上保護すべきかと比較した場合「無料の療養看護」の方だと考える方は多いと思います。

私もそう考えました。

そこで、イを正しいと判断し、ウを間違っていると判断しました。

この判断には自信があったため、問題文の右上に「正解している」という意味で〇をつけています。

ただ、条文を読んでいる人にとっては楽勝だったでしょうね…。

第1050条

1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

だって、1050条1項の冒頭にしっかりと書いてありますから…。

条文をいかに中途半端に読んでいたかを思い知らされました。

まとめ

この問題は本当に思い出深い問題です。

私は過去問を中心に勉強しており、知識は主に条文と択一と記述の解説から仕入れていました。

テキストについては確認程度に数回しか見ていません。

ただ、最新論点については、過去問にはないので答練や模試で知識を補充していました。

でも少し甘かった部分があるのでしょうね…。

そのため、この問題は少し戸惑いました。

なんとか正解したという感じです。

問題24

解説

これも本試験では肢の順に判断していないので、順不同で書いていきます。

まず問題文に「正しいもの」とあるので、ケアレスミス防止のために問題文に〇をつけます。

イの肢

イの肢は有名ですよね。

これは判例です。

即座に〇をつけました。

エの肢

エは同意傷害についての肢ですね。

これは即座にバツにしています。

同様の事例において、最決昭55・11・13(刑集34・6・396)「承諾は,保険金を騙取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであって,これによって当該傷害行為の違法性を阻却するものではない」と判事しています。

オの肢

オは明らか間違っています。

いくら喧嘩だと言っても一方的に殴られているのに正当防衛でないというのは、あまりに理不尽ですよね。

普通に考えてあり得ないです。

ウの肢

最高裁昭和50年11月28日第三小法廷判決では「急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利を防衛するためにした行為と認められる限り,その行為は,同時に侵害者に対する攻撃的な意思に出たものであっても,正当防衛のためにした行為にあたると判断するのが,相当である。」と判事されており、防衛の意思と攻撃の意思の併存を認めています。

また、他人の権利を防衛するための正当防衛も成立します。

第36条

  1. 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

アの肢

実はアの肢とウの肢で少し迷いました。

正当防衛の条文は知っていたので「ウの肢は大丈夫」だと思ったのですが、アの肢がどういうことを想定しているのか少しわからなかったんですね。

肢の文章からは間違っているのがわかったのですが。

「刑法はたとえ1問でも間違えたくない」と思ったので、頭の中で必死に事例を思い浮かべました。

その時思い浮かんだのが、賃借人が賃料を支払わないときに、賃貸人が賃借人に無断で鍵を開け室内に侵入するという事案です。

それを思い浮かべて「こういうこともあるのでは」と思い〇にしました。

後日談ですが、あとで調べたところ、前田雅英氏の刑法各論講義に「家賃を払わない間借り人を追い出すために大家が侵入する行為も本罪を構成する」と判事した判例があるのを見つけました。

結果オーライだったという事でしょうか…。

まとめ

自分で調べて勉強するのは本当に役に立ちます。

いろいろ大変ですが、自分で努力しないと力はつかないのだと実感しています。

12月からの研修もしっかりと頑張りたいです。

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