~「名義預金」と判断される基準とは~
「父の名義じゃない預金まで相続財産に含まれるの?」
そんな疑問をお持ちの方へ――
相続手続きの中で、被相続人名義ではない預金が発見されることがあります。一見すると関係のない預金のようですが、**「名義預金」**とされて遺産分割の対象になるケースも少なくありません。
この記事では、名義預金の判断基準、定期預金と普通預金での違い、トラブルを防ぐための注意点について、司法書士・行政書士の視点からわかりやすく解説します。
1.名義預金とは?実質的な所有者に注目
名義預金とは、預金の名義人(形式上の所有者)と、実質的な所有者が異なる預金のことです。

たとえば、被相続人が子ども名義の預金口座に自分の資金を入金し、通帳や印鑑を管理していたような場合には、その預金は「名義は子ども」「実質は被相続人のもの」とされ、相続財産に含まれる可能性があります。
2.名義預金と判断されやすいケース
名義預金とされるかどうかは、以下のような要素を総合的に見て判断されます。
✅ 名義預金と判断される傾向が強いケース
- 預金の原資(出捐者)が被相続人の収入・資産
→ 退職金・年金・給与などが原資となっている - 通帳や印鑑が被相続人の管理下
- 口座開設や定期預金の更新を被相続人が行っていた
- 名義人が預金の存在・内容を把握していない
- 被相続人の口座から定期的に資金移動されていた
3.名義預金と判断されにくいケース
以下のような場合には、名義預金とされるリスクは比較的低くなります。
❌ 名義預金と判断されにくいケース
- 贈与契約書や証拠があり、明確な贈与意思が確認できる
- 名義人自身の収入・資産で形成された預金
- 名義人が自由に出し入れ・使用していた(生活費など)
- 夫婦の協力扶助に基づく共有財産とみなされる場合
4.定期預金と普通預金で判断基準が異なる?
名義預金の判断においては、**預金の種類(定期預金か普通預金か)**によっても考慮されるポイントが異なります。
【定期預金】
- 拘束性が高く、自由に使えないため、誰が管理・解約手続きをしていたかが重視されます。
- まとまった金額が入金されている場合、その原資(出捐者)が誰であるかが特に重要です。
- 開設・更新の手続きに名義人が一切関与していない場合、名義預金と判断される可能性が高くなります。
また、判例では、定期預金については記名式・無記名式を問わず、「出捐者を名義人とする客観説」が採用されています。これは、名義人が預金契約の当事者であるという形式的立場を重視する考え方ですが、相続実務ではあくまでその実質的帰属者が誰かを丁寧に検討する必要があります。

【普通預金】
- 日常生活での使用が前提とされるため、名義人が自由に出し入れしていれば、名義預金とはされにくい傾向があります。
- 頻繁な少額入出金がある口座は、生活費や個人的支出とみなされることが多いです。
- 生前贈与の主張も比較的認められやすいですが、証拠(契約書・メモ・振込記録など)があることが望まれます。
5.名義預金をめぐるトラブルと防止策
名義預金は、相続手続きにおける見えにくい落とし穴です。以下のようなトラブルが発生しやすいため、注意が必要です。
- 相続人間での対立・疑念の原因になる
- 遺産分割協議がまとまらない
- 最悪の場合、調停や訴訟に発展する
- 相続財産の過少申告で税務署から指摘を受けることも

🛠 防止のための対応
- 相続開始後、名義に関わらず家族名義の口座も含めて丁寧に調査する
- 預金の出所や管理実態を記録・整理しておく
- 他の相続人との間で誤解が生じないよう、早めに情報共有を行う
- 判断が難しい場合は、相続手続きに精通した専門家に相談する
⚠ 税務・紛争に関する注意点
本記事では、**名義預金が「相続財産に含まれるかどうか」**という法的な判断に焦点を当てています。
一方で、
- 相続税の課税対象になるかどうか
- 相続人間で紛争が生じている場合の対応 といった問題は、司法書士・行政書士の業務範囲外です。
特に、**相続人間で名義預金の帰属をめぐって争いがあるような場合(紛争性がある場合)**には、司法書士は関与できません。そのような場合は、弁護士に相談することが必要です。
また、税務に関する判断については、税理士などの専門家への相談をおすすめします。

✅ まとめ|名義預金は「実態」がすべて
- 名義にとらわれず、預金の原資・管理・使用実態を総合的に見る
- 定期預金は特に慎重に判断すべき(判例では客観説が採用)
- トラブル予防のためには、証拠の確保と専門家への早期相談がカギ
- 紛争がある場合は弁護士、税務は税理士へ、適切な専門家に相談を
👨⚖️ 相続でお困りですか?
名義預金が相続財産に含まれるかどうか――
この判断は、相続手続きを円滑に進めるうえで非常に重要です。
相続財産の調査に不安がある方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
司法書士・行政書士として、あなたの状況に寄り添いながら、適切な相続手続きをサポートいたします。
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