閉鎖会社(非公開会社)で取締役が辞任したときの登記手続き|必要書類とパターン別の注意点を司法書士が解説

閉鎖会社(非公開会社・取締役会非設置会社)では、取締役の人数が少ないケースが多く、取締役が1人辞任するだけで会社運営に大きな影響を与えることがあります。特に、代表取締役の辞任が絡む場合は、登記手続きや会社印の管理にも注意が必要です。

この記事では、閉鎖会社(非公開会社)で取締役が辞任した場合に必要な登記手続きについて、パターン別に詳しく解説します。

目次

閉鎖会社(非公開会社)の取締役辞任登記が必要な理由

では、役員に関する変更があった場合、変更後2週間以内に登記しなければならないと定められています(会社法第915条1項)。
登記を怠ると、代表者に過料が科される可能性もあります。

ケース①:代表取締役の変更なし|取締役1人が辞任した場合

🏢【もとの役員構成】

  • 取締役:A・B
  • 代表取締役:A

📌【状況の変化】

条件内容
取締役数A・B(計2名)
辞任届提出Bが株主総会前に辞任届を提出

✅必要書類

  • 辞任届(代表取締役でない取締役の辞任届は認印の押印で大丈夫です)。
  • 委任状

✅注意点

  • 変更があった時から2週間以内に、管轄の法務局に登記の申請を行います。
  • 資本金の額が1億円以下の株式会社の場合登録免許税は1万円になります。
  • 定款に取締役の数に別段の定めがある場合は異なる対応が必要な場合があります

ケース②.取締役が辞任し、新たな取締役を選任した場合

💼【ケース】取締役Bが辞任し、株主総会で取締役Cが新任された場合

  • 元の構成
    • 取締役:A・B
    • 代表取締役:A

📌【状況の流れ】

タイミング取締役構成備考
株主総会前A・BBが取締役辞任届を提出(辞任意思表示)
株主総会当日A(+C)Cが株主総会で新任される(Bはすでに辞任)

✅必要書類

  • 辞任届(代表取締役でない取締役の辞任届は認印の押印で大丈夫です)
  • 取締役Cの就任承諾書(印鑑証明書記載通りの住所・氏名を記載してください)
  • 取締役Cの印鑑証明書
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 委任状

✅注意点

  • 変更があった時から2週間以内に、管轄の法務局に登記の申請を行います。
  • 資本金の額が1億円以下の株式会社の場合登録免許税は1万円になります。
  • 定款に取締役の数に別段の定めがある場合は異なる対応が必要な場合があります

ケース③.代表取締役が株主総会で辞任し、株主総会で残りの取締役から代表取締役を選任する場合(取締役も同時に辞任)

🏢【もともとの構成】

  • 取締役:A・B・C・D
  • 代表取締役:A

📌【状況の変化】

タイミング取締役構成代表取締役備考
① 辞任前A・B・C・DAAが両方の地位に在任
② Aが辞任B・C・D(空席)
③ 株主総会で代表取締役を選任B・C・DB

✅必要書類

  • 取締役及び代表取締役Aの辞任届
  • 株主総会議事録(旧代表取締役Aの辞任及び新任取締役及び代表取締役Bの選任)
  • 取締役B・C・Dの印鑑証明書
  • 株主リスト
  • 委任状

✅注意点

  • 株主総会の決議により選定された代表取締役については,取締役の地位と代表取締役の地位が分化してないため,辞任の意思表示によって代表取締役の地位のみを辞任することはできず,辞任を承認する株主総会の決議が必要です
  • 新しく代表取締役となるBは、代表取締役としての印鑑を印鑑届書にて届け出なければいけません(この際Bの印鑑証明書の添付が必要です)
  • 株主リストを作成するのは、新しく代表取締役になったBです(代表取締役Aはすでにその地位を退いており、株主リストを作成できません)
  • 資本金の額が1億円以下の株式会社の場合登録免許税は1万円になります。
  • 変更があった時から2週間以内に、管轄の法務局に登記の申請を行います。

ケース④:代表取締役である取締役が株主総会前に辞任して、新たに株主総会で取締役を選任してそのものが代表取締役になる場合

▶️ 会社のもともとの構成

  • 取締役:A・B・C
  • 代表取締役:A

📌【状況の変化】

タイミング取締役構成代表取締役備考
① 辞任前A・B・CAAが代表取締役・取締役として在任中
② Aが辞任B・C(空席)Aが代表取締役の地位を辞任し
③ 株主総会で新任B・C・D(新任)D株主総会でDが新たに取締役に選任される

✅必要書類

  • 代表取締役及び取締役Aの辞任届(Aの実印もしくは会社実印での押印が必要)
  • 取締役Cの就任承諾書
  • 取締役B、C、Dの印鑑証明書
  • 株主総会議事録(新任取締役の選任)
  • 株主リスト
  • 委任状

✅注意点

  • 代表取締役がAのみの場合でAが代表取締役を辞任した場合、代表取締役が不在になります。もっとも、Aの辞任によっても取締役の員数が満たされており、権利義務取締役とはならず退任となった場合は、Aの辞任によって代表取締役が不在になったとしてもAが取締役の地位を有しない以上、代表取締役の座にとどまることはできず、権利義務代表取締役となることなく、取締役も代表取締役も辞任できます。
  • 新しく代表取締役となるDは、代表取締役としての印鑑を印鑑届書にて届け出なければいけません(この際Dの印鑑証明書の添付が必要です)
  • 株主リストを作成するのは、新しく代表取締役になったDです(代表取締役Aはすでにその地位を退いており、株主リストを作成できません)
  • 資本金の額が1億円以下の株式会社の場合登録免許税は1万円になります。
  • 変更があった時から2週間以内に、管轄の法務局に登記の申請を行います。

ケース⑤:代表取締役Aが「代表の地位のみ」辞任して、既存の取締役が株主総会で新たに代表取締役に選任された場合

🏢【もとの役員構成】

  • 取締役:A・B
  • 代表取締役:A

📌【状況の変化】

タイミング取締役構成代表取締役備考
① 辞任前A・BA代表権を持つのはAのみ
② Aが代表辞任A・BAは代表を辞任し、取締役として残る
③ 株主総会により選任B例:B株主総会でBが代表に就任

✅【登記手続き】

登記内容説明
① Aの代表取締役辞任登記「代表取締役辞任届」を添付して代表辞任登記のみ行う(取締役としては在任のまま)
② Bの代表取締役就任登記株主総会により新代表に選定されたBの就任登記

✅必要書類

  • 株主総会議事録(代表取締役Aの辞任の承認決議及び新代表取締役Bの選任)
  • 株主リスト
  • 代表取締役Bの印鑑証明書(代表印が必要になります)
  • 委任状

✅注意点

  • 株主総会で代表取締役に選任されたものが、代表取締役を辞任する場合、株主総会の承認決議が必要になります
  • 新しく代表取締役となるBは、代表取締役としての印鑑を印鑑届書にて届け出なければいけません(この際Bの印鑑証明書の添付が必要です
  • 株主リストを作成するのは、新しく代表取締役になったBです(代表取締役Aはすでにその地位を退いており、株主リストを作成できません)
  • 通常代表取締役Aの辞任の承認決議の株主総会議事録には、法務局に届け出をしている代表取締役Aの印鑑を押印してください
  • 代表取締役を辞任したAは、依然として取締役ではあるので、代表取締役を選任する株主総会決議の議事録には、法務局に届け出をしている代表取締役Aの印鑑を押印することで、個人の実印の押印及び印鑑証明書添付を省略できます
    • 通常は辞任の承認決議と同じ株主総会で代表取締役の選任決議がされるので個人の実印が必要になることはないと思います。
  • 資本金の額が1億円以下の株式会社の場合登録免許税は1万円になります。
  • 変更があった時から2週間以内に、管轄の法務局に登記の申請を行います。

まとめ

閉鎖会社では、取締役の辞任一つでも手続きに不備があると登記が却下されたり、思わぬトラブルにつながることがあります。特に代表取締役の変更が伴う場合は、書類の正確性や登記のタイミングが重要です。

少しでも不安な方は、専門家である司法書士に相談されることをおすすめします。

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