1. 遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、その合意内容を文書にしたものです。
不動産の相続登記や預貯金の解約・名義変更など、相続手続きにおいて欠かせない重要書類です。
2. 協議書作成の第一歩は「相続人の確定」から
遺産分割協議書を作成する際、最も重要なのが相続人を正確に把握することです。
遺産分割協議においては、相続人全員の合意が必要です。
一人でも相続人を漏らしてしまうと、遺産分割協議が無効となるため、相続人の把握には注意が必要となります。
相続人の調査には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)の取得が不可欠です。
併せて、相続人全員の現在戸籍を取り寄せ、相続関係を確定させます。
単に配偶者と子どもが相続人という場合は相続人の把握をすることは難しくありません。
しかし、いくつかのケースにおいて注意すべき点があるので注意が必要です。
3. 【ケース別】特殊な相続人の扱い
3-1. 死後の認知
遺産分割前の認知
認知とは、婚姻外の子を父親が法的に認める手続きです。
認知された子は、法律上の相続人となります。
相続開始後に認知がなされた場合でも、相続開始時点に遡って相続権が認められます。
そのため、遺産分割前に認知がされた場合は、認知されたものは相続人として遺産分割協議に参加することになります。
遺産分割後の認知
遺産分割後の認知についてです。
この場合、「認知された人は相続人になるのだから、その前にした遺産分割協議は無効になるのでは?」と思う方もいると思います。
しかし、結論から言うと「遺産分割協議は有効」です。
これは明文があります。
910条
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
民法910条では、すでに遺産分割がなされた場合、認知されたものは価格のみによる支払いの請求ができると定めており、遺産分割協議は有効のままにしています。
もっとも、「じゃあ何も問題ない」と考えるのは少し問題です。
もし、認知されたものから、価額の支払請求がされると、相続人は法定相続分に従い支払いをすることになります。
この時十分な現金が手元にあればいいのですが、子どもの大学の授業料や家のローンなどの支払いに追われ、相続人の手元に、支払いをするだけの現金がないということも予想できます。
そのような場合に備えて、死後認知の訴えがされた場合は、一方の相続人に不動産のみを相続させるのではなく、預金もある程度分けておくことが必要です。
4-2. 胎児がいる場合の相続権
民法では「胎児は、相続についてはすでに生まれたものとみなす」とされています(民法886条2項)。
この「生まれたものとみなす」という文言ですが、判例上は、胎児の時点では権利能力が認められないものの、胎児がいきて生まれれば、相続開始時に遡って、権利能力があったこととするものとされています(停止条件説)。
したがって、相続開始時に胎児がいた場合、その出生を待ってから遺産分割協議を行う必要があり、親が法定代理人として、胎児を含めた遺産分割協議をすることはできず、仮にしたとしても無効になります。
胎児の出生したあとに遺産分割協議をすることが必要です。
また、胎児が出生した場合ですが、この場合、親が相続人である場合に、親が胎児の法定代理人となることはできません。
もし、親が胎児の法定代理人として遺産分割協議を成立させた場合は、遺産分割協議は無効となります(民法108条)。
家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があることに注意してください(民法826条1項)。
826条
1 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
5. 遺産分割協議書作成時の注意点
- 相続人全員の実印と印鑑証明書が必要
- 不動産の記載は「登記簿記載どおり」に記載する
- 持分の記載は正確に。例:〇分の〇ずつ
- 誤字・脱字・漏れがあると金融機関や法務局で受理されないことも
特に不動産の登記手続をする場合、記載ミスは法務局での補正指示や登記却下の原因にもなり得ます。
6. 司法書士に依頼するメリット
当事務所では、相続人の戸籍調査から遺産分割協議書の作成、不動産の相続登記まで一括して対応しています。
- 相続人調査で漏れを防止
- 必要書類の代理取得にも対応
- 相続トラブルを防ぐ法的なアドバイスも提供
ご自身で調べるのが不安な方、複雑な相続関係がある方は、ぜひ専門家にご相談ください。
7. まとめ|遺産分割協議書は相続人の把握がすべての出発点
遺産分割協議書を有効に作成するためには、相続人の確定が何より重要です。
胎児や被相続人の死後に認知された子など、想定していなかった相続人が存在することもあります。
協議が無効になれば、すべてやり直しになる可能性も。
当事務所では、相続人調査から登記まで、相続手続きをトータルでサポートいたします。
相続でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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