会社を設立するにあたって、最初に決めるべきなのが、商号(会社名)・目的(事業内容)・本店所在地です。
これらは登記上必要なだけでなく、今後のビジネスに直結する極めて重要な要素となります。
この記事では、司法書士の立場から、設立登記時の実務も踏まえつつ、それぞれのポイントと注意点を解説します。
✅1. 商号(会社名)を決めるときのポイント
● 類似商号に注意しよう
会社法では類似商号の登記規制は廃止されていますが、「不正競争防止法」により、他社と紛らわしい名称の使用は禁止されています。
トラブル回避のために、以下の方法で調査しておきましょう:
- 登記情報提供サービスで類似商号を検索
- インターネット検索で業種+地域を掛け合わせて確認
- **J-PlatPat(特許庁の商標検索)**で商標権との抵触がないか確認
同業種・同地域に似た名称があれば、変更を検討すべきです。
● 使用できる文字とルール
商号には、以下の文字が使用可能です:
- ひらがな、カタカナ、漢字
- アルファベット(例:ABC)
- 数字(例:123)
- 記号「&」「・」(※文頭・文末不可)
🚫 使用不可な文字:
ハイフンに似た「マイナス記号(-)」など、一部の記号は登記情報システム上で使用できません。
また、ふりがなや英文表記は登記上不要ですが、ビジネス展開を考える際にはブランディングとして検討する価値があります。
✅2. 事業目的を決めるときの注意点
会社の「目的」は登記事項であり、許認可や税務署・金融機関との関係でも非常に重要です。
● 明確性・適法性・営利性を満たすこと
事業目的は以下の3点を満たす必要があります:
- 適法性:違法な事業は禁止
- 営利性:利益を目的とする事業内容であること
- 明確性:第三者が見ても業種が判断できる程度に明確であること
NG例:「コンサルティング業」
OK例:「経営に関するコンサルティング業務」
● 許認可業種は特に注意
建設業・不動産業・古物商・人材派遣業・介護事業など、許認可が必要な業種については、許認可官庁の基準に適合した記載が必要です。
場合によっては、法律名(例:労働者派遣法、宅地建物取引業法)まで明示する必要があります。
● 抽象的すぎる目的は避ける
登記は受理されても、以下のような不利益が生じる場合があります:
- 許認可申請が通らない
- 銀行口座の開設や融資に支障
- 取引先からの信用が得られにくい
目的は具体的かつ実務的に有効な内容にすることが重要です。
●多すぎる目的も避ける
会社を設立した後に融資を受ける場合、どういう目的で会社を設立したかについて明確に説明できる必要があります。
時折あるのが、あれもこれもと目的に記載してしまうパターンです。
会社を大きくしたいという気持ちからそうなるのでしょうが、現在の業務にあまりにも関係のない目的が多数記載されている場合は「この会社何をやっている会社なの?」と疑問を持たれてしまいます。
誤解を生まないためにも、会社の目的は設立段階では明確にしておくことをおすすめします。
✅3. 本店所在地の決め方と登記のコツ
会社の「本店所在地」は登記事項であり、契約や税務、信用にも関わる要素です。
● 定款には「最小行政区画」までの記載がおすすめ
本店所在地については、定款には都道府県+市区町村までとし、具体的な番地やビル名は記載しないのが実務上の定石です。
📄【定款記載例】
第○条(本店)
当会社は、本店を東京都文京区に置く。
✅このようにする理由(メリット)
- 将来的に同一市区町村内で事務所を移転しても定款変更が不要
- ビル名変更やフロア移動でも、登記費用(登録免許税)3万円が不要
例:
「〇〇ビル5階」→「〇〇ビル7階」に移転するだけでも、定款にビル名を記載していた場合は定款変更+公証人認証+登記費用が発生します。
これを防ぐため、定款には「東京都文京区」とのみ記載し、実際の住所(番地・ビル名)は発起人の決議書で定める形にします。
● コワーキングスペースやバーチャルオフィスは慎重に
コスト重視で選ばれがちなこれらのオフィス形態ですが、以下のリスクがあります:
- 銀行口座が開設できない(特にメガバンク)
- 融資や取引先との信頼性で不利になる可能性
- 実体のない法人とみなされ、法人格否認リスクも
信頼性の高い物件・住所を使用することが、会社の成長に直結します。
✅まとめ:最初の選択が会社の未来を左右します
商号・目的・本店所在地は、いずれも設立時にしか変更できないわけではありませんが、後の変更はコストと手間がかかります。
- 商号は調査と差別化を意識
- 目的は許認可・信頼性の観点から明確に
- 本店所在地は柔軟性と信頼性を確保
栗栖司法書士行政書士事務所では、最適な設立スキームをご提案し、安心・確実な法人設立をサポートいたします。
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