賃貸不動産を所有している方の遺言、どのように考えるべき?
たとえば、配偶者と長女が相続人となるケースで、「配偶者に賃料収入を得てもらい、生活を安定させてほしい」という希望がある場合、どのような遺言が最適でしょうか。
最もシンプルな方法は、「配偶者に賃貸不動産を相続させる」ことです。しかし、この方法にはいくつかの注意点があります。
遺留分を侵害するリスク
賃貸不動産は一般的に高額な資産となることが多く、現金よりも評価額が高い場合もあります。このような資産を配偶者に単独で相続させると、長女の遺留分を侵害する可能性が出てきます。
仮に現金を用意して遺留分への配慮をしたとしても、不動産の修繕費や空室リスクなど、現金ではカバーできない問題も生じることがあります。
高齢の配偶者が不動産管理を担うことのリスク
「遠方の物件には行きたくない」「修繕や契約ごとは面倒」というのが、高齢の配偶者の本音であることも珍しくありません。
また、日常生活に支障がある場合、不動産の管理どころではないという状況になることもあります。
解決策:不動産は長女に相続、賃料収入は配偶者に
このような場合、遺言者の希望と現実的な管理負担を両立させる方法として有効なのが、
**「不動産を長女に相続させ、賃料を配偶者に支払わせる」**という遺言内容です。
この方法であれば、配偶者は面倒な管理から解放されつつ、毎月の賃料という安定収入を得ることができます。長女にとっても、不動産の管理を通じて実家の資産を活かすことができるメリットがあります。
ただし要注意!トラブル防止には遺言執行者の指定がカギ
このような形で遺言書を作成したとしても、将来的にトラブルが起きる可能性があります。
- 長女と配偶者の関係が悪化
- 長女が賃料支払いを怠る
- 配偶者が生活費を得られず困窮する
こうした問題を防ぐために、遺言執行者の指定が極めて重要です。
遺言執行者を指定すれば、賃料の支払いを確保できる
遺言執行者がいれば、民法1012条に基づき、
**「遺言内容の実現のため、相続財産の管理その他必要な一切の行為を行う権限」**があります。
第1012条
- 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
たとえば、長女が配偶者に賃料を支払わない場合でも、遺言執行者が代わって支払いを請求できます。
また、遺言執行者の解任は、正当な理由がない限り家庭裁判所で認められない(民法1019条)ため、簡単に排除されることもありません。
第1019条
- 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
遺言作成は司法書士へ相談を
配偶者の生活を守りつつ、相続トラブルを防止する遺言書の作成には、法的知識と実務経験が不可欠です。
当事務所では、依頼者のご希望を丁寧にお伺いし、遺言内容の構成から執行者の指定までトータルでサポートしています。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 賃料を配偶者に支払うよう指定した遺言でも、効力はありますか?
→ はい、あります。ただし、確実な執行のためには遺言執行者の指定が不可欠です。
Q2. 遺言執行者には誰を指定すべきですか?
→ 法律専門家(司法書士や弁護士など)を選ぶと、公正な執行が期待できます。
Q3. 遺留分を侵害していないか確認したいのですが…
→ ご安心ください。当事務所では遺留分の計算や相続人間のバランスにも配慮した遺言書をご提案いたします。
結び文
賃貸不動産をお持ちの方で、「配偶者に不自由なく暮らしてもらいたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
専門家が、あなたの想いを形にするお手伝いをいたします。
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