再婚後の相続対策に「配偶者居住権」を活用するには?~遺言書に記載する実例と注意点

目次

はじめに

「配偶者居住権」という制度をご存じの方は多いかもしれません。
しかし、「実際にどんな場面で使えるのか?」と聞かれると、イメージがわかない方も少なくありません。

以前、当事務所でも配偶者居住権について解説しましたが、具体的にどういう状況で利用すべきかまでは触れていませんでした。

https://kurisu-office.com/2025/04/5819/

配偶者居住権の活用が特に有効と考えられるのは、高齢になってから再婚された場合です。
再婚家庭の相続は関係が複雑になりやすく、遺産分割でもめるケースが多く見られます。

そこで今回は、仮想事例を取り上げながら、配偶者居住権を遺言書に記載する方法とそのポイントについて、わかりやすく解説いたします。

高齢で再婚した場合の相続リスク

近年は60代・70代になってから再婚される方も増えています。
その場合、相続をめぐって次のような問題が起こりやすくなります。

  • 後妻の生活を守りたい
  • しかし、財産は自分の血縁の子に残したい
  • 居住用不動産しか財産がない場合、遺留分の侵害リスクがある

このようなジレンマを解決するために、配偶者居住権が活用できます。

【事例】田中家の場合

田中一郎さん(80歳)は前妻との婚姻中に一人娘・花子さんをもうけました。
その後、前妻とは離婚し、後妻の洋子さん(70歳)と再婚して現在は二人で暮らしています。

  • 田中さんの血縁の子どもは花子さんのみ
  • 後妻・洋子さんとの間には子どもはいません
  • 洋子さんには、前夫との間に生まれた**息子(次郎さん)**がいます

このような家族構成のもと、田中さんが亡くなった場合を考えます。

法定相続のルール

田中さんが遺言書を作らずに亡くなった場合、相続分は次の通りです。

  • 洋子さん(後妻):2分の1
  • 花子さん(田中さんの実子):2分の1

仮に田中さんの財産が「自宅のみ」だとすると、洋子さんと花子さんが半分ずつ権利を持つ形になります。
しかし、自宅は分けられません。そこで争いが生じる可能性が高まります。

後妻に不動産を相続させると起こる問題

田中さんが「洋子さんに自宅を残したい」と考え、遺言で自宅の所有権を洋子さんに相続させた場合、次のリスクが発生します。

洋子さんが亡くなった後、その不動産は洋子さんの子である次郎さんに相続されます。
次郎さんは田中さんと血縁関係のない人物です。

つまり、田中さんの築いた大切な財産が、自分とは無関係の人に渡ってしまうのです。

配偶者居住権を活用した解決策

このような場合に有効なのが「配偶者居住権」です。

配偶者居住権とは?

  • 被相続人の死亡時にその自宅に住んでいた配偶者が、引き続き無償で住み続けられる権利
  • 所有権と分けて設定できるため、財産の承継先を柔軟に決められる

【解決のための遺言例】

  • 自宅の**所有権は花子さん(実子)**に相続させる
  • 後妻の洋子さんには、配偶者居住権を設定して住み続けられるようにする
  • 洋子さんの生活を支えるため、金融資産を別途相続させる

この方法のメリット

  • 洋子さん(後妻)は生涯安心して住み続けられる
  • 自宅の所有権は実子・花子さんに残るため、血縁に財産を承継できる
  • 遺留分対策として、金融資産を調整して渡すことができる

他に考えられる方法

配偶者居住権のほかにも、次のような手法があります。

  • 遺言信託:信託銀行に遺言執行を任せ、後妻の生活を守る
  • 負担付遺贈:自宅を子に遺贈し、後妻を住まわせる義務を課す

状況に応じて組み合わせることで、さらに安心できる仕組みを作ることが可能です。

まとめ:再婚家庭の遺言は特に重要

再婚後の相続では、法定相続の仕組みだけでは望む形にならないことが多くあります。
とりわけ「自分の財産を誰に残したいのか」を明確にしなければ、意図しない人物に資産が流れてしまうことがあります。

配偶者居住権を活用すれば、

  • 後妻の生活を守る
  • 実子に財産を残す

この両立が可能になります。

再婚家庭においては、遺言書の作成は不可欠です。専門家と相談しながら、自分の意思をしっかりと遺言に残しましょう。

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「配偶者居住権を遺言に書いておきたい」「再婚後の相続が不安」など、個別の事情に合わせて最適なご提案をいたします。

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