相続登記のご相談を受けていると、
何十年もの間、相続登記がされていない土地に出会うことが少なくありません。
「先代が亡くなった後、そのままになっていた」
「特に困っていなかったので、手続きをしていなかった」
こうしたケースは珍しくありませんが、
相続登記を長期間放置していると、
後になって大きな問題になることがあります。
その代表例が、
被相続人の住所を証明できない問題です。
相続登記では「同一人物であること」の証明が必要
相続登記を申請する際には、
登記記録上の被相続人と、戸籍上の被相続人が
同一人物であることを証明しなければなりません。
そのために必要となるのが、
- 登記記録上の住所
- 被相続人が死亡したときの住所
この二つが、
同一人物としてつながっていることが分かる資料です。
通常は、
- 住民票の写し
- 住民票の除票の写し
- 戸籍の附票の写し
などを取得し、
登記簿の住所から死亡時の住所までの「住所の沿革」を確認します。
住民票の除票・戸籍の附票には保存期間がある
ここで注意しなければならないのが、
これらの書類には保存期間があるという点です。
- 住民票の除票:転出や死亡から 5年
- 戸籍の附票(除籍):除籍から 5年
この期間を過ぎてしまうと、
原則として役所では交付を受けることができません。
相続登記を何十年もしていない場合、
「住所を証明するための書類が、すでに廃棄されている」
という事態が、現実に起こります。
実務の現場でヒヤッとした経験
ここで、私自身の相続登記業務の中で、
本当に冷や汗をかいた経験を一つご紹介します。
ある相続案件で、
登記簿に記載されている住所と、
戸籍から判明した被相続人の住所が一致しないケースがありました。
さらに調査を進めると、
その土地を被相続人が取得したのは 30年以上も前。
「これは、住所を証明する資料がもう残っていないかもしれない」
そう思い、強い不安を感じながら役所に確認に行きました。
すると幸いなことに、
住民票の除票がまだ保存されており、そこに住所の記載があったのです。
この一枚の書類によって、
登記名義人と被相続人が同一人物であることが証明でき、
相続登記を無事に進めることができました。
もし、この住民票の除票が廃棄されていたら、
相続人の方々に改めて事情を説明し、
追加の資料を集め、
場合によっては相続人全員に協力をお願いしなければならない状況でした。
「たまたま残っていたから助かった」
そう言っても過言ではない案件でした。
書類が残っていない場合の対応
住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合でも、
- 登記済権利証(いわゆる昔の権利証)
- 登記識別情報通知
- 固定資産評価証明書
などによって、
登記簿上の住所と被相続人の住所が一致していることが確認できれば、
相続登記が認められるケースもあります。
しかし、
これらの資料でも確認ができない場合、
最終的に必要になるのが 上申書 です。
上申書は「簡単な書類」ではない
上申書と聞くと、
「事情を書いた紙を提出するだけ」と思われがちですが、
実務上は決して軽い書類ではありません。
上申書には、
- 作成者の実印の押印
- その実印の印鑑証明書の添付
が求められます。
つまり、
「この内容に間違いがないことを、責任をもって申告します」
という性質の書類です。
相続人全員分の上申書が必要になることも
案件によっては、
相続人全員の上申書が必要になる場合もあります。
その場合、
- 相続人一人ひとりに事情を説明する
- 実印を押してもらう
- 印鑑証明書を取得してもらう
といった対応が必要になります。
相続人が遠方に住んでいる場合や、
相続関係が複雑な場合には、
時間的にも精神的にも大きな負担になります。
相続登記を長期間放置した結果、
関係者全員に協力をお願いしなければならなくなる。
これは、決して珍しい話ではありません。
相続登記は、時間が経つほど重くなる
相続登記をしていない期間が長くなるほど、
- 客観的な証明書が失われる
- 書面による説明が必要になる
- 実印や印鑑証明書の提出が求められる
というように、
手続きの負担は確実に大きくなります。
「今は困っていないから」
「まだ先でいいだろう」
そう思っているうちに、
将来の相続人が、
思いもよらない苦労を背負うことになるかもしれません。
まとめ 〜上申書が必要になる前に〜
上申書は、
相続登記において 最後の手段 とも言える書類です。
しかも、
- 実印の押印
- 印鑑証明書の添付
という重い要件があるため、
簡単に用意できるものではありません。
相続登記をしていない不動産がある場合、
また、名義がかなり昔のままになっている不動産がある場合には、
問題が表面化する前に対応することが重要です。
資料が残っている「今」だからこそ、
できる手続きがあります。
当事務所の相続登記サポートについて
当事務所では、
相続登記を中心とした不動産登記業務を取り扱っています。
- 長年相続登記をしていない不動産がある
- 名義が古く、資料が残っているか不安
- 上申書が必要と言われて、どう進めてよいか分からない
このようなご相談にも、
これまでの実務経験を踏まえ、
一つひとつ状況を確認しながら対応しています。
相続登記は、
早めに動くことで選択肢が広がり、
結果的に負担を軽くできる手続きです。
「今すぐ登記をするかは分からない」
「まずは状況だけ知りたい」
そのような段階でも構いません。
気になる不動産がある場合は、
資料が残っているうちに、一度ご相談ください。
113-0034
東京都文京区湯島四丁目6番12号B1503
栗栖司法書士行政書士事務所
電話番号 03-3815-7828
携帯番号 080-8911-8112
当事務所は予約制です。事前に電話かメールでの予約をお願いします。

