不法行為(民法709条)の要件事実
不法行為の要件事実は、民法709条に規定されています。不法行為が成立するためには、次の5つの要件を満たす必要があります。
1. 被告の故意または過失
加害行為が、被告により、わざと(故意)または不注意(過失)によって行われたことが必要です。事故などのケースでは、特に過失が問題になります。
2. 権利または法律上保護される利益の侵害
不法行為となるのは、誰かの権利や法律で守られている利益を侵害した場合です。典型的なものとして、生命・身体・財産・名誉などがあります。
3. 原告に損害が発生したこと
違法な行為があったとしても、被害者に実際の損害がなければ不法行為にはなりません。損害には、大きく分けて「財産的損害」と「精神的損害(慰謝料)」があります。
4. 1と3の間に因果関係が存在すること
加害行為と損害の間に「因果関係」があることが必要です。つまり、「その行為がなければ、損害は発生しなかった」と言える場合に、不法行為が成立します。
5. 損害の発生及び額
通説・判例によれば「損害」とは,不法行為により現実に生じた金銭的な被害であるとする見解(差額説)とされています。
また、原告は,損害の発生のみならず,損害の「額」についても主張立証責任を負います。
立証責任
訴訟と言うものは、ただ訴状を提出しただけでは、請求は認められません。
請求が認められるには、証拠を提出し、立証責任を果たす必要があります。
不法行為(民法709条)においては、立証責任を負うのは原告とされています。
これは想像すれば容易にわかると思います。
いきなり道端を歩いていて「お前に不法行為に基づく損害賠償を請求するから金を払え」と言われてた場合を考えてください。
言われた側に、責任がないことを証明させようとしても「なかったことの証明」はほとんど困難です。
ゼロの証明ほど難しいものはないと言われています。
そのため、民法では、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求では、原告に立証責任があるとされています。
ネット社会の暴走について
今はネット社会です。
ネット上では様々なことについてコメントがされ大騒ぎになることがあります。
ただ、その騒ぎの中には「これって本当なの?」と疑いたくなることもあります。
一つの問題が起きたとき、そこに関わる全ての人に対して「お前にも責任がある」「共謀していたのでは」と騒ぎ立てる行為などです。
さらにたちが悪いのは、その方のCMを流しているスポンサーなどに嫌がらせの電話をして、スポンサーを降りることを要求することです。
スポンサーも消費者の意見を無視するわけにいかないので、時折圧力に屈してしまいます。
しかし、これはやりすぎではないでしょうか?
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と言うことわざがありますが、これはあくまでそのお坊さんが来ている袈裟を指しているのであって、すべての袈裟を指しているわけではありません。
一人のお坊さんが憎いからと言って、袈裟に関連している方々すべてを「お前は悪党だ」と罵るのはいかがなものでしょうか?
少なくとも、そのことに対して立証責任を果たすべきだと思います。
最近のネット社会は少し暴走しすぎていると私は感じています。
私個人の体験より
実は、私は2022年に本人訴訟をして勝訴しています。
このように書くと、かなり簡単に勝訴したように思えますが、実際はかなり大変でした。
最初は証拠も証言もなかったのですが、自分の主張する事実が認められるには、どういう証拠を集めればいいか、どういう証言を引き出せばいいか真剣に考えました。
私の問題はかなり昔の問題でもあり、センシティブな問題だったので相談する相手もいませんでした。
同級生と会話をするときは、少しでも誘導をしてしまうと、調査や裁判の時に「あの時栗栖に言われたから言っただけ」と言われてしまいます。
そのため、会話をするときは誘導を入れないように注意しました。
1時間くらい会話して役に立つ部分が30秒くらいしかないことがほとんどでした。
ただ、これをしっかりやっていたおかげで、裁判になった時には、加害者が自ら告白した内容と相まって、事実関係がほぼ認められることになりました。
私は司法試験の勉強をしていたことがあります。
そのため、「言っただけになってはいけない」と思い、立証責任を果たすことを重視してきました。
言いたいことがあってもなかなか言えないというのが人の世の常ですが、それでも証拠を集める努力は最低限する必要があるというのが私個人の意見です。
それに、私の件についても、私は関与があった人間は非難していますが、それ以外の人間まで非難してはいません。
また、その際には「○○と言う事実があるのに知らないというのは明らかにおかしい」と指摘しています。
すくなくとも、具体的な事実に基づく私的と言うのは必要だと思います。
まあ、密室での事件などでは難しくそこが悩みどころでもあるのですが…。
専門家としての責任
ただ、司法書士は特別研修を受ければ簡裁代理権を取得します。
制限はありますが専門家として裁判業務を行うことも可能になるわけです。
その立場にある人間が、ネット上の大騒ぎに左右されてはいけないというのが私の考えです。
しかも、ネット上の意見=世の中の意見ではありません。
専門知識のある人間が、ネット上の大騒ぎの渦に巻き込まれることだけはあってはいけないと思っています。
最後に
私は世間の大多数は冷静で良心的な人間だと思っています。
世間にはネット上の大騒ぎで「あまり軽率なことを言うのはよくない」と考え、コメントを控える、沈黙する大多数の方々がいらっしゃるはずです。
そういった良心的な方々に理解される人間であることはとても大事なことだと思います。
そして、専門家として、世間から信頼を勝ち取るためには勉強することが必要です。
学ぶだけではだめなのでしょうが、学ばなければ何も得られません。
5月からは簡裁代理権取得のための特別研修があります。
実力のある司法書士になるためにも、しっかりと勉強をしたいと思います。