不動産を購入・相続・贈与などにより取得したとき、「所有権移転登記」を行う必要があります。しかし、「費用はどのくらい?」「手続きが大変そう」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、所有権移転登記の基本から費用相場、手続きの流れ、住所変更登記が必要なケース、登録免許税の軽減措置まで、司法書士がわかりやすく解説します。

1. 所有権移転登記とは?
所有権移転登記とは、不動産の所有者が変わるときに法務局へ申請して行う手続きです。
不動産の売買・相続・贈与・離婚に伴う財産分与など、さまざまな原因で所有者が変わることがあります。これらのときに、新しい所有者として法的に認められるためには、所有権移転登記が必要です。
登記をしないままでいると以下のようなリスクがあります:
- 所有者として法的に認められない
- 他人に売却されても対抗できない
- 相続の際にトラブルが起こる
2. 所有権移転登記が必要になる場面とは?
以下のようなケースで所有権移転登記が必要になります:
- 不動産を購入したとき
- 不動産を贈与されたとき
- 相続が発生したとき
- 離婚による財産分与で名義変更が必要になったとき
登記を怠ると、売却や担保設定ができなくなったり、登記懈怠により過料が科される可能性があります(ただし現状、過料の適用例は少ないです)。なお、2026年4月1日からは住所変更登記が義務化され、違反した場合の過料制度も整備されます。

3. 所有権移転登記の費用はいくらかかる?
【登録免許税(基本税率)】
登記原因 | 通常税率 | 特例・軽減後税率 |
---|---|---|
売買 | 固定資産評価額 × 2.0% | 土地:1.5%、建物:0.3%(条件付き) |
相続 | 固定資産評価額 × 0.4% | 土地:免除(条件付き) |
贈与 | 固定資産評価額 × 2.0% | 原則軽減なし |
✅ 【1】土地の売買に関する登録免許税の軽減措置
登記の内容 | 軽減前(本則) | 軽減後(軽減措置) | 適用期限 |
---|---|---|---|
所有権移転登記(売買による土地の取得) | 2.0%(1,000分の20) | 1.5%(1,000分の15) | 令和8年3月31日まで |
📌 売買によって取得した土地が対象です。
✅ 【2】住宅用家屋に関する登録免許税の軽減措置
分類 | 対象住宅 | 軽減後税率(通常 → 軽減) | 主な要件 | 根拠法令 |
---|---|---|---|---|
① 一般住宅(新築・未使用) | 建築後未使用住宅 | 1,000分の20 → 3 | ・売買または競落による取得 ・自己居住用(居住部分90%以上) ・床面積50㎡以上 ・登記は取得後1年以内 ・区分建物は耐火・準耐火等 | 租特法73条 |
② 一般住宅(使用済) | 昭和57年1月1日以降または耐震適合住宅 | 1,000分の20 → 3 | 上記①に加え、以下のいずれかの書類を添付: ①耐震基準適合証明書 ②住宅性能評価書(耐震等級1〜3)③瑕疵担保責任保険証明書等 | 租特法73条 |
③ 特定認定長期優良住宅(未使用) | 認定長期優良住宅 | 1,000分の20 → 1(戸建は2) | ・平成21年6月4日以降の取得 ・自己居住用・床面積50㎡以上 ・登記は取得後1年以内(例外あり)等 | 租特法74条 |
④ 認定低炭素住宅(未使用) | 認定低炭素住宅 | 1,000分の20 → 1 | ・平成24年12月4日以降の取得 ・自己居住用・床面積50㎡以上 ・登記は取得後1年以内等 | 租特法74条の2 |
⑤ 特定の増改築等がされた住宅(買取再販) | 宅建業者から購入したリフォーム住宅 | 1,000分の20 → 1 | ・宅建業者からの売買で取得 ・昭和57年以降建築 or 新耐震適合 ・工事費:建物価格の20%超または300万円超 ・取得後1年以内の登記等 | 租特法74条の3 |
要件については代表的なものを記載したに過ぎないことをご理解ください(ご自身でのご確認をお願いします)。
【司法書士報酬】
- 案件の内容によります
【その他の費用】
- 登記事項証明書(登記簿謄本)代:数百円
- 登録免許税分の収入印紙代
4. 登記義務者の住所変更が必要な場合
所有権移転登記を申請する際、登記義務者(売主や贈与者など)の住所が登記簿上の住所と異なる場合、原則として先に「登記名義人住所変更登記」を行う必要があります。
これは、登記簿上の所有者と実際に登記義務を果たす人物が同一であることを証明するためです。
同一人物であることが確認できないと、法務局は登記を受け付けてくれません。

✅ 住所のつながりを証明する書類
住所のつながりを証明することのできる書類としては以下のようなものがあります。
- 住民票:1通で登記簿上の住所から現在の住所へのつながりを証明できる場合
- 戸籍の附票:住民票だけでは証明できない場合。住所の履歴が記載されています。
- 住民票の除票・改製原戸籍の附票:さらに古い履歴が必要な場合
どれを準備すべきかについては、司法書士(当事務所)にお問い合わせください。
✅ 登記名義人住所変更登記の流れ
- 証明書類の準備
- 登記申請書の作成
- 法務局に申請
※登録免許税は不動産1個につき1,000円
住所変更登記が完了した後、所有権移転登記を改めて申請する流れとなります。
※相続の場合は例外的に住所変更登記を省略できる場合がありますが、住民票の除票や戸籍の附票などによる住所のつながりの証明が必要です。
5. 所有権移転登記を司法書士に依頼するメリット
- 書類の不備や記載ミスによる補正・却下を防止できる
- 必要書類の案内や取得代行が可能
- 登記ミスによる法的トラブルを未然に防げる
- 忙しい方でもスムーズに手続きを進められる
不安がある場合は、まずは司法書士に相談してみるのがおすすめです。

よくある質問(FAQ)
- 所有権移転登記は自分でできますか?
-
可能です。ただし書類の不備により補正や却下となるケースも多いため、事前に法務局に相談するなど慎重に対応することが重要です。
- 登録免許税の「評価額」はどこでわかりますか?
-
市区町村で発行される「固定資産評価証明書」に記載されています。
- 所有権移転登記をしないとどうなりますか?
-
第三者に対抗できず、売却や相続時にトラブルとなる可能性があります。
- 登記手続きをするのは売主と買主のどちらですか?
-
一般的には買主側が行い、費用も買主が負担するのが慣例です(ただし契約で別段の定めがあればこの限りではありません)。
所有権移転登記に関するご相談は当事務所へ
当事務所では、相続・売買・贈与など各種ケースに応じた所有権移転登記のご相談を承っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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