親名義の家を相続したら、最初に「事実確認」をします
親が亡くなり、実家や土地を相続する可能性があるときは、まず遺言書、不動産の登記名義、相続人、住宅ローンなどを確認します。
確認前に名義変更の書類を作り始めると、やり直しになることがあります。ただし、相続放棄や税務申告などには期限があるため、確認と並行して、必要な手続きと期限を把握しましょう。
家族の間で「長男が実家を継ぐ」と決まっていたとしても、それだけで登記名義が自動的に変わるわけではありません。また、固定資産税の納税通知書に載っている不動産だけが、親の所有不動産のすべてとは限りません。
慌てて遺産分割協議書へ署名する前に、相続の全体像を把握することが大切です。
最初に確認する7項目
1.遺言書がないか確認する
自宅の金庫、仏壇、机の引き出し、貸金庫などを確認します。公正証書遺言については、相続人などの利害関係人が、公証役場の遺言検索制度を利用できる場合があります。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた可能性も確認します。
自宅などで見つかった自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所での検認が必要です。封印のある遺言書は、自分で開封せず、家庭裁判所での手続きを確認してください。公正証書遺言や、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言については、検認は不要です。
2.家と土地の登記名義を確認する
「親の家」と呼んでいても、土地は祖父名義、建物は父名義、私道は父と近隣の共有ということがあります。
登記事項証明書または登記情報で、次を確認します。
- 土地の所在・地番・地目・面積
- 建物の所在・家屋番号・種類・床面積
- 現在の所有者と持分
- 抵当権などの担保の有無
住所として使う「住居表示」と、登記の「地番」は異なることがあります。自宅住所だけで判断しないようにしましょう。
3.固定資産税の資料を確認する
固定資産税の納税通知書に添付される課税明細書などには、不動産の評価額や所在地が記載されています。相続登記の登録免許税を計算する際にも評価額を使用します。
ただし、非課税の土地や私道、別の名義で管理されている共有持分などを、手元の課税明細書だけで把握できない場合があります。必要に応じて、不動産がある市区町村の名寄帳なども確認します。名寄帳は、その市区町村の資料であり、全国の不動産が一度に分かるものではありません。
4.法律上の相続人を確認する
配偶者や同居の子だけで手続きを進められるとは限りません。遺産分割協議による相続登記を進める場合などは、通常、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認し、法律上の相続人を確定します。
前婚の子、養子、認知した子などが判明することもあります。遺産分割協議をする場合は、原則として相続人全員の参加が必要です。
5.住宅ローンや抵当権を確認する
住宅ローンが残っている場合は、金融機関へ連絡し、残高と団体信用生命保険の加入・適用を確認します。保険によってローンが完済されても、登記簿上の抵当権が自動的に消えるわけではなく、抹消登記が必要です。
借金の状況によっては、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄には原則3か月の期限があるため、残高や保険の適用を確認しながら、早めに専門家へ相談してください。
6.火災保険、管理、公共料金を確認する
空き家になる場合は、火災保険の契約内容、鍵、郵便物、水道・電気・ガス、庭木、雨漏りなどを確認します。
相続登記が終わるまでの間も、建物の維持管理を考える必要があります。遠方の実家で定期的な管理が難しい場合は、管理方法を家族で決めましょう。
7.家をどうするか大まかな方針を決める
主な選択肢は、相続人が住む、賃貸する、売却する、当面保有する、解体するなどです。
方針によって、不動産を取得する人、手続きの日程、税務上の検討事項が変わります。相続した家を売却する場合は、通常、買主へ名義を移す前に相続登記を済ませます。
相続放棄を検討している場合は、売却や解体など財産の処分を始める前に専門家へ相談してください。
親名義の家を名義変更するまでの流れ
| 段階 | 行うこと |
|---|---|
| 1 | 遺言書と不動産資料を確認する |
| 2 | 必要な戸籍を集め、相続人を確認する |
| 3 | 遺言書の内容などを確認し、必要に応じて相続人全員で遺産分割協議を行う |
| 4 | 遺産分割協議書など、手続きに応じた書類を用意する |
| 5 | 固定資産評価額を確認し、登録免許税を計算する |
| 6 | 不動産所在地を管轄する法務局へ申請する |
| 7 | 完了後の登記内容と交付書類を確認する |
必要書類の詳しい内容は、相続登記に必要な書類一覧をご覧ください。
戸籍集めや名義変更を任せたい方へ
「仕事があり、戸籍を取り寄せる時間がない」「実家から離れて住んでいる」「家族の話はまとまったが、書類の作り方が分からない」という方は、相続登記の手続きを司法書士へ依頼できます。
すべての書類を集め終えてから相談する必要はありません。当事務所では、司法書士本人が、戸籍の収集、相続人の確認、ご家族で決まった内容に基づく遺産分割協議書の作成、相続登記の申請まで対応します。
遠方にお住まいの場合も、面談や本人確認の方法を確認したうえで、郵送などを利用して進めます。相続人全員が事務所へ集まる必要は通常ありません。
戸籍収集と遺産分割協議書作成を含む標準プランは、88,000円(税込)です。登録免許税、戸籍等の取得費用、郵送費などの実費は別途必要となり、相続人や不動産の数、相続関係などによって追加料金が発生する場合があります。料金と追加料金の条件をご確認ください。
依頼を検討されている方は、親が亡くなった時期、不動産のおおよその所在地、相続人として心当たりのある方、遺言書や家族の話し合いの状況を、分かる範囲でお知らせください。現在の状況を確認し、必要な手続きと費用の見込みをご案内します。
家を誰の名義にするか決めるときの注意点
安易に共有名義にしない
兄弟姉妹で公平にするため、実家を等しい持分の共有名義にすることがあります。しかし、将来、家全体を売却するには、通常、共有者全員の協力が必要になります。また、共有者の一人が亡くなると、その持分を複数の相続人が受け継ぐ可能性があります。
共有にする場合は、誰が住むのか、修繕費や固定資産税を誰が負担するのか、将来売却するときの方針まで話し合うことが重要です。
代償分割も検討する
一人が家を取得し、他の相続人へ金銭を支払う「代償分割」という方法があります。家を分けずに単独名義にしやすい一方、取得者に支払資力が必要です。
売却して代金を分ける方法もある
相続人の誰も住まない場合は、相続登記後に売却し、代金を分ける換価分割を検討できます。遺産分割協議書の書き方や売却手続き、税務上の扱いを事前に確認して進めます。
相続登記以外に期限がある手続き
家の相続では、相続登記だけでなく、次の期限にも注意します。
- 相続放棄・限定承認:原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内。
- 準確定申告・納付:申告が必要な場合、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内。
- 相続税申告・納付:申告が必要な場合、原則として、亡くなった方の死亡を知った日の翌日から10か月以内。
- 相続登記:原則として、自分のために相続が始まったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日
から3年以内。
2024年4月1日より前に相続が始まり、それ以前から不動産を相続で取得したことを知っていた場合も、未登記であれば義務化の対象となり、原則として2027年3月31日までの対応が必要です。また、遺産分割後には、その内容に応じた登記を、遺産分割の日から3年以内に行う義務があります。遺産分割の話し合い中でも、基本となる相続登記の期限が自動的に延びるわけではありません。
すべての相続で準確定申告や相続税申告が必要なわけではありません。期限の短い手続きから確認し、税務判断や申告については税理士へ相談してください。
よくある質問
- 親名義の家にそのまま住み続けてもよいですか?
-
住み続けられるかどうかは、家の所有関係、遺言書の内容、ほかの相続人との合意などによって異なります。誰が家を取得するかを決めずに長期間放置すると、次の相続で権利関係が複雑になる可能性があります。居住を続ける場合も、家族で方針を確認し、必要な遺産分割と相続登記を進めましょう。
- 家の権利証(登記済証等)が見つかりません
-
相続による名義変更では、原則として、亡くなった方の権利証や登記識別情報は添付書類として必要ありません。ただし、不動産の特定や住所の確認の手掛かりになる場合があります。見つかった資料は保管し、ほかの資料とあわせて確認してください。
- 親の家を売ることが決まってから登記すればよいですか?
-
相続登記には期限があります。また、買主が決まってから戸籍収集を始めると、売買の日程に間に合わない可能性があります。売却方針があるなら、必要な手続きを早めに確認して進めましょう。
まとめ
親名義の家を相続したら、遺言書、不動産の登記名義、相続人、住宅ローン、管理状況を確認します。相続放棄や税務申告などの期限にも注意し、そのうえで家を誰が取得し、どう利用するかを考えて、相続登記を進めます。
戸籍集めや書類作成を任せたい場合は、確認がすべて終わっていなくても、相続登記の依頼についてご相談いただけます。固定資産税の納税通知書、遺言書、戸籍など、お手元にある資料から状況を確認します。
任せられる手続きは相続登記のご依頼、報酬と実費・追加料金については料金ページをご覧ください。
参考情報
※本記事は2026年10月時点の制度を前提とした一般的な説明です。相続放棄・税務・登記の判断は個別事情によって異なります。
具体的な手続きを進める際は、資料を確認したうえで、それぞれの専門家にご相談ください。税務・登記の判断は、個別事情に応じて各専門家へご確認ください。
相続登記のご相談・お問い合わせ
栗栖司法書士事務所では、ご事情を確認したうえで、必要な手続きと費用の見通しをご案内しています。
相続登記(基本プラン)66,000円(税込)から
※登録免許税・戸籍取得費用等の実費は別途必要です。事案によって追加料金が発生する場合があります。
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