相続した不動産を売却する前に必要な相続登記

相続した不動産を売却するには?相続登記の順番・名義・準備の進め方

「相続した実家を売りたいけれど、まだ父の名義のまま」「不動産会社へ相談する前に、名義を変える必要があるのだろうか」。相続した家や土地を売却するときは、売却の準備と名義変更の順番を確認しておくことが大切です。

相続した不動産を買主の名義へ変更するには、原則として、先に亡くなった方から相続人への名義変更が必要です。この手続きが、相続登記です。その後、売買によって買主へ名義を変更します。

一方、不動産会社への査定依頼や売却方法の相談は、相続登記が終わる前でもできます。査定とは、いくらくらいで売れそうか、不動産会社に価格の目安を調べてもらうことです。

ただし、戸籍を集めたり、相続人を確認したり、誰が不動産を相続するかを決めたりする準備には時間がかかることがあります。売却する可能性がある段階で、査定の相談と並行して相続登記の準備を始めておくと安心です。

目次

相続した不動産を売却するときの、名義変更の順番

例えば、父親名義の家を子どもの一人が相続して売却する場合、登記上の名義は次の順番で変えます。

  1. 父親の名義から、その家を相続する子どもの名義へ変更する(相続登記)
  2. 子どもの名義から、買主の名義へ変更する(売買による所有権移転登記)

相続人が買主に家や土地を売る場合、相続人への登記を飛ばして、亡くなった方から直接買主の名義にすることは原則としてできません。

査定・売買契約・買主への名義変更は、分けて考えます

相続登記が済んでいなくても、査定や売却の相談を始めることはできます。また、売買契約を結ぶことと、買主への名義変更を完了することは別です。相続登記の前に売買契約を結ぶ場合もありますが、誰が売主になるか、いつまでに必要書類をそろえられるかを確認する必要があります。

「登記は後で何とかなる」と日程だけを先に約束すると、準備が間に合わないおそれがあります。不動産会社と登記を担当する司法書士に、現在の相続手続きの状況を伝えてから契約条件を決めましょう。

相続した家や土地を売却するまでの基本的な流れ

一般的には、次の内容を確認しながら進めます。遺言書の確認や査定の相談など、並行して行える準備もあります。

1.土地・建物の現在の名義を確認する

まず、登記事項証明書で、誰の名義になっているかを確認します。登記事項証明書は、土地・建物の所在地、所有者、権利の内容などが記載された法務局の書類です。

固定資産税の納税通知書や課税明細は、不動産を探す手掛かりになります。ただし、納税通知書の宛名だけで登記上の所有者を判断しないでください。土地と建物が別の名義になっている場合や、敷地とは別に私道の共有持分がある場合もあります。共有持分とは、複数人で所有する不動産について、それぞれが持つ権利の割合です。

2.遺言書と相続人を確認する

遺言書があるかを早めに確認し、その内容を踏まえて手続きを整理します。あわせて必要な戸籍を集め、法律上、誰が相続人になるのかを確認します。

必要な戸籍の範囲は、遺言書の有無や相続の内容によって変わります。亡くなった方の戸籍が複数の市区町村に分かれている場合や、相続人だった方がその後に亡くなっている場合は、追加の調査が必要になることがあります。

3.誰が不動産を相続し、売却代金をどう扱うか決める

遺言書がなく、話し合いで不動産の分け方を決める場合は、必要な相続人全員で協議します。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。

誰が不動産を相続するかに加え、売却代金を分ける予定があるかも整理します。合意した内容は、必要に応じて遺産分割協議書にまとめます。これは、「誰が、どの遺産を、どのように相続するか」を書いた書類です。相続人が一人の場合など、遺産分割協議が不要な場合もあります。

4.必要書類をそろえ、相続登記を申請する

戸籍、遺言書又は遺産分割協議書、住所を確認する資料などをそろえ、不動産を管轄する法務局へ申請します。必要書類はケースによって異なるため、詳しくは相続登記に必要な書類一覧をご覧ください。

5.買主への名義変更に向けて日程を調整する

不動産会社や売却の登記を担当する司法書士と連絡を取り、売買契約・決済に必要な準備を進めます。「決済」とは、通常、残りの売買代金の支払いと、不動産の引渡しなどを行う段階をいいます。

相続登記と買主への名義変更を、同じ日に順番を付けて申請する方法もあります。ただし、すべての案件で利用できるとは限りません。売却予定があることを早めに伝え、相続登記を先に完了させるか、連続して申請するかも含めて調整してください。

誰の名義にするかは、売却代金の分け方と一緒に考えます

例えば、父親が亡くなり、母親と成人した子ども二人が相続人になった場合を考えます。以下は手続きを説明するための例です。

一人が不動産を相続してから売却する場合

話し合いによって母親一人が家を相続し、母親名義にしたうえで売却する方法があります。この場合、不動産を売る人は母親になります。

ただし、母親が自分の財産として家を相続する場合と、相続人全員で売却代金を分けるために代表して母親名義にする場合では、合意する内容が異なります。

複数人の共有名義にして売却する場合

母親と子ども二人の共有名義にし、三人で家全体を売却する方法もあります。家全体の通常の売却には、原則として共有者全員の同意と手続きへの協力が必要です。一人が家全体の売却を決めて進められるわけではありません。

相続人が遠方に住んでいる場合も、全員が同じ日に同じ場所へ集まる必要があるとは限りません。必要な意思確認・本人確認や書類の用意について、担当する不動産会社・司法書士と相談します。

売ってお金で分けるなら、名義を決める前に相談する

相続した家や土地を売り、その代金を相続人で分ける方法を「換価分割(かんかぶんかつ)」といいます。

代表者一人の名義で進める場合も、売却代金を分けるための名義であることや、費用を差し引いた代金をどう分けるかなど、合意内容を明確にする必要があります。「とりあえず一人の名義にして、売った後で自由にお金を分ければよい」と考えず、登記の前に司法書士・税理士へ確認してください。

税金の扱いは、実際の合意内容や代金の分け方によって変わります。国税庁の換価分割のための相続登記と贈与税に関する事例でも、名義を一人にした目的と、その後の実際の分配を前提として判断されています。一人の名義なら必ず贈与税がかからない、という意味ではありません。

売却を急ぐ場合に、早めの確認が必要なケース

  • 相続人が多い、又は兄弟姉妹・甥や姪が相続人になっている
  • 祖父母など、亡くなった方より前の世代の名義が残っている
  • 誰が不動産を相続するか、まだ決まっていない
  • 相続人の中に、その後に亡くなった方がいる
  • 相続人の一部が遠方又は海外に住んでいる
  • 登記に記載された住所と、亡くなった方の最後の住所とのつながりを確認できない
  • 土地と建物の名義が違う、又は別の地域にも不動産がある
  • 売買契約日や決済日が、すでに決まっている

こうした場合は、戸籍や住所を確認する資料の追加取得、複数の登記申請、関係者との日程調整などが必要になることがあります。売却期限がある場合は、最初の相談時に伝えてください。必要な期間は案件と法務局の処理状況によって異なり、一律に「何日で終わる」とは言えません。

相続人申告登記だけでは、買主への名義変更はできません

「相続人申告登記」は、亡くなった登記名義人の相続人であることなどを法務局に申し出る制度です。期限内に相続登記をすることが難しい場合に、基本的な申請義務を果たすための方法として利用できます。

相続人申告登記をしても、不動産を相続した人への所有権の移転登記をしたことにはなりません。そのため、相続人申告登記だけを済ませて、相続登記を省略して買主の名義へ変更することはできません。

売却を予定している場合は、誰がどの権利を相続するかを確認し、その内容に応じた相続登記まで進める必要があります。また、遺産分割が済んだ後、その内容に基づいて登記する義務を、相続人申告登記で代わりに果たすことはできません。

制度の説明は、法務省の相続人申告登記についてでも確認できます。

売却するか決めていない場合も、相続登記の期限を確認します

売却するか決まっていなくても、相続登記の申請義務は別に考える必要があります。相続登記は2024年4月1日から義務化されています。

基本的な期限は、自分のために相続が始まったことと、その不動産の所有権を相続で取得したことの両方を知った日から3年以内です。2024年4月1日より前から、相続が始まったことと、その不動産を相続したことの両方を知っていた場合は、原則として2027年3月31日までに申請が必要です。古い相続も放置せず、相続登記の期限と確認方法をご覧ください。

遺産分割がまとまった後、その内容に応じた登記に別の期限が生じる場合もあります。自分のケースの期限は、相続の時期と手続きの進み具合を合わせて確認してください。

先に相続関係や不動産の名義を整理しておけば、将来の売却に向けた準備を進めやすくなります。また、遺産の分け方が未決定のまま相続人が亡くなると、話し合いに参加する人が増えることがあります。売るかどうかを決めるまで、すべての準備を止める必要はありません。

よくある質問

STEP
相続登記が終わる前に、不動産会社へ相談できますか?

査定や売却方法の相談はできます。最初に「名義人が亡くなっていて、相続登記はまだ終わっていない」と伝えてください。契約条件や決済日を決める前に、相続登記を担当する司法書士にも予定を共有しましょう。

STEP
相続人全員の名義にしないと、売却できませんか?

必ず全員の名義にする必要はありません。有効な遺言書や遺産分割協議により一人が不動産を取得し、その方が売却する方法もあります。売却代金を相続人で分ける予定がある場合は、名義と代金の分け方をまとめて検討してください。

STEP
相続登記と、買主への名義変更を同じ日にできますか?

必要な条件と書類がそろえば、相続登記を先、買主への名義変更を後として、同じ日に連続して申請する方法があります。相続登記を省略する方法ではなく、その日に必ず両方の審査が終わるという意味でもありません。利用できるかは、事前に担当する司法書士へ確認してください。

STEP
遠方や海外に住む相続人がいても、手続きを進められますか?

進められる場合があります。国内であれば郵送などを利用し、必要な署名・押印や本人確認を準備します。海外在住の場合は、印鑑証明書に代わる署名証明などが必要になることもあるため、個別に必要書類を確認し、日程に余裕を持たせてください。

売却を考え始めた段階で、相続登記についてご相談ください

栗栖司法書士事務所では、売却前に必要となる相続登記について、現在の名義、相続人、手元にある書類を確認し、必要な手続きと費用の見込みをご説明します。戸籍収集や、相続人間で決まった内容に基づく遺産分割協議書の作成もご依頼いただけます。

お問い合わせの際は、分かる範囲で次の情報をお知らせください。

  • 不動産のおおよその所在地
  • 現在の名義人と、亡くなった時期
  • 相続人のおおよその人数と、遺言書の有無
  • 不動産を相続する人や、売却代金の分け方が決まっているか
  • 不動産会社へ相談しているか、売買契約・決済の予定があるか

すべての書類がそろっていなくても構いません。ご依頼できる手続きの範囲や費用は、相続登記の料金・プランもご確認ください。売却の仲介は不動産会社、税金の申告や個別判断は税理士へ確認します。

相続人間で争いがあり、交渉の代理が必要な場合は、弁護士への相談をご検討ください。

相続登記のご相談・お問い合わせ

栗栖司法書士事務所では、ご事情を確認したうえで、必要な手続きと費用の見通しをご案内しています。

相続登記(基本プラン)66,000円(税込)から

※登録免許税・戸籍取得費用等の実費は別途必要です。事案によって追加料金が発生する場合があります。

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