「実家の相続登記は終わったのに、父名義の土地がもう一筆見つかった」「自宅前の私道にも持分があると分かった」。このようなとき、最初の遺産分割や登記をすべてやり直すのか、不安になるかもしれません。
後から土地が見つかっても、以前の相続手続きが当然にすべて無効になるわけではありません。まず、その土地の登記内容と、すでに作成した遺産分割協議書・遺言書を確認します。遺産分割協議書とは、「誰が、どの遺産を相続するか」を話し合って決め、その内容を書いた書類です。見つかった土地を誰が相続するか決まっていなければ、その土地について改めて話し合い、名義変更の手続きを進める方法を検討します。
この記事では、登記の見落としに気づいた方に向けて、確認する順番と相談時に用意したい資料を説明します。
最初に「登記だけの漏れ」か「分け方も未決定」かを確認します
協議書に土地が記載され、取得者も決まっている場合
遺産分割協議書には土地が記載されているのに、登記申請からその土地だけ漏れていた場合です。協議書の記載と現在の登記内容を照合し、その協議書に基づく相続登記ができるかを確認します。登記を申請していないという理由だけで、取得者を決め直すとは限りません。
協議書に土地が記載されていない場合
協議書に今回の土地が書かれていなくても、「書かれていない財産があった場合、誰が相続するか」を決めた文章がないか確認します。
例えば、「この協議書に書かれていない財産は、長男の○○が相続する」と書かれている場合です。協議書では、こうした財産を「その他の財産」とまとめて表現していることがあります。
ただし、その文章があるだけで、今回見つかった土地も長男が相続すると決めつけることはできません。その土地まで含めた約束だったのか、誰が相続するのかが協議書全体から読み取れるかを確認する必要があります。以前の協議書と土地の登記資料を一緒に確認し、名義変更に使えるかを判断します。
書かれていない財産を誰が相続するかについての取り決めがなく、その土地を相続する人も決まっていなければ、今回の話し合いに参加する必要がある相続人など全員で、その土地の分け方を改めて決めることを検討します。民法907条は、遺産の全部だけでなく一部の分割も認めています。
遺言書がある場合は、先にその内容と対象財産を確認します。また、土地の見落としが以前の合意の前提を大きく変える場合や、財産を隠していたとの主張がある場合は、追加協議だけでよいかを含め弁護士への相談を検討してください。
見つかった土地は、地番・名義・持分を調べます
土地は、普段使う住所だけでなく、登記上の所在・地番で特定します。登記事項証明書などで、亡くなった方が所有権の登記名義人になっているか、単独所有か共有かを確認しましょう。登記上の住所が古い場合は、住民票の除票や戸籍の附票などで、登記名義人と亡くなった方が同一人物かも確認します。
私道を近隣の方と共有していた場合、相続の対象となるのは、亡くなった方が持っていた共有持分です。私道全体を相続するのか、持分だけを相続するのかを混同しないことが大切です。敷地と私道が別の地番であれば、それぞれの登記を確認します。
| 確認するもの | 確認する内容 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 所在・地番、名義人、持分、現在の登記内容 |
| 以前の遺産分割協議書・遺言書 | 土地の記載、取得者、後日判明した財産の扱い |
| 以前の登記完了書類 | どの土地・建物について登記を済ませたか |
| 課税明細・自治体の資産資料 | ほかに調査する不動産の手掛かり、評価額等 |
祖父母など、さらに前の世代の名義が残っている場合は、親の相続だけでは手続きが完結しないことがあります。以前の相続の内容や死亡の順番から確認します。基本的な準備は親名義の家を相続したら最初にすることも参考にしてください。
私道や共有地は、納税通知書だけで判断しないでください
私道などには、固定資産税が課税されていない土地もあります。すべての私道が非課税になるわけではありませんが、納税通知書の課税明細だけで、亡くなった方の不動産がすべて分かったと判断しないことが大切です。
不動産所在地の市区町村の固定資産税担当窓口に、亡くなった方名義の土地・建物を一覧で確認できる資料について問い合わせます。東京23区内の不動産は、都税事務所が窓口です。名寄帳は、所有者ごとに土地・建物の情報をまとめた資料で、名称や取得方法、記載範囲は自治体によって異なります。
請求する際は、「単独名義だけでなく、共有持分や非課税の私道なども含めて確認したい」と伝えてください。単独所有分と共有分で資料が分かれていたり、非課税の土地が名寄帳に載らなかったりすることがあります。記載されない不動産をどのような資料で調べられるか、必要書類とあわせて窓口に確認しましょう。
追加の協議から相続登記までの進め方
1.以前の書類と現在の相続関係を確認する
以前集めた戸籍や協議書があれば、まずそれらを確認します。すべてを最初から集め直すと決める必要はありません。ただし、追加資料の要否は、手元の資料と今回の申請内容によって変わります。
その後に相続人が亡くなっている場合は、その方が承継していた権利について、さらに相続が生じていることがあります。以前の協議に参加した人と、今回参加すべき人が同じとは限りません。亡くなった時期や、その後の相続関係を戸籍などで確認します。
2.必要なら追加の遺産分割協議を行う
追加の協議では、対象となる土地と持分、誰が取得するかを明確にします。「家を取得した人が、私道も当然に取得したはず」とは決めつけず、既存書類の対象と新たな合意の内容を整理します。
前の協議で財産を取得しなかった人も、今回の協議から当然に外れるわけではありません。相続放棄や相続分の譲渡、その後の死亡なども踏まえ、必要な当事者を確認します。書類に署名・押印を依頼する前に、当事者と不動産の記載を点検すると、取り直しを減らせます。
3.必要書類を整え、土地を管轄する法務局へ申請する
戸籍などの相続関係を証する資料、協議内容を証する書面、取得者の住所を証する資料などを整えます。遺産分割協議による申請では、必要な実印の押印・印鑑証明書も確認します。これは一般的な整理で、案件ごとの添付書類は異なります。相続登記に必要な書類一覧もご覧ください。
前の自宅の登記に、別の土地が自動的に追加されるわけではありません。見つかった土地について必要な相続登記を申請します。完了後は、対象の地番・持分・取得者が申請内容どおりかを確認してください。
期限と費用は、見つかった土地について確認します
相続登記の基本的な申請期限は、自己のために相続が開始したことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内です。後から土地が見つかった場合も、その土地について、いつ取得を知ったのかを確認します。別の不動産の相続登記を済ませた日から、一律に3年と数えるわけではありません。
また、以前から知っていた土地について、協議書に記載し直しただけで期限が最初から数え直しになるとは限りません。法定相続分で登記した後の遺産分割で、その相続分を超えて所有権を取得した場合や、相続人申告登記後の遺産分割で所有権を取得した場合には、分割の日から3年以内という別の申請義務もあります。古い相続の経過措置も含め、相続登記の3年の期限を確認してください。正当な理由なく申請義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となります。
追加登記にも、登録免許税、証明書取得費用、依頼する場合の司法書士報酬などがかかります。相続による所有権移転登記の登録免許税率は原則0.4%ですが、一定の土地には免税措置があります。固定資産税が非課税の私道だからといって、登録免許税も自動的に不要になるとは限りません。評価額や適用要件を個別に確認します。国税庁「登録免許税の税額表」で基本的な取扱いを確認できます。
よくある質問
- 自宅の相続登記は終わっています。登記を取り消してやり直すのでしょうか?
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土地が別に見つかったという理由だけで、完了した自宅の登記を取り消すことにはなりません。まず、新しい土地が以前の協議の対象だったかを確認し、その土地について必要な登記を検討します。以前の合意自体を争う事情がある場合は、別途の検討が必要です。
- 私道の共有者全員に協議へ参加してもらう必要がありますか?
-
亡くなった方の持分を相続するための遺産分割協議に、相続人ではない他の共有者が参加する必要は通常ありません。亡くなった方の権利を承継する側の必要な当事者で協議します。私道の利用・管理などの問題は、相続登記とは分けて確認します。
- 「後から見つかった財産は長男が相続する」と書いてあれば、その協議書を使えますか?
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使える可能性はありますが、その一文だけでは判断できません。今回の土地もその約束に含まれるのか、誰がどの土地を相続したのかを書面で確認できるかを調べます。協議書全体と、土地の名義や地番が分かる登記事項証明書などを用意してご相談ください。署名済みの協議書に、自分の判断で土地を書き足すことは避けてください。
- 相続税の申告が済んでいても確認は必要ですか?
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必要です。追加の土地が判明したことを、申告を依頼した税理士などに伝えてください。相続登記と相続税申告は別の手続きであり、申告への影響は税務上の事情を踏まえて確認します。
土地の見落としに気づいたら、以前の書類と一緒にご相談ください
栗栖司法書士事務所では、相続登記のご依頼に当たり、不動産と相続関係、すでに作成した書類を確認し、必要な手続きと費用の見込みをご案内します。登記の追加が必要と思われる方は、次の情報を分かる範囲でお知らせください。
- 土地のおおよその所在地と、分かれば地番
- 登記名義人のお名前と亡くなった時期
- 以前の遺産分割協議書・遺言書・登記完了書類の有無
- その後に亡くなった相続人がいるか
- 土地の取得者について合意できているか
相続人間で取得者などに争いがあり、交渉を必要とする場合、司法書士が一方の相続人の代理人として遺産分割交渉を行うことはできません。弁護士への相談をご検討ください。
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