相続登記の手続きの流れ|相談から登記完了まで

「親が亡くなったので、実家の名義を変更したい」

「司法書士に依頼すると、何をしてもらえるのだろう?」

「戸籍は自分で集めなければならないの?」

相続登記を司法書士へ依頼したいと思っても、具体的な手続きの流れが分からず、不安に感じる方もいらっしゃると思います。

相続登記は、司法書士へ依頼したらすぐに法務局へ申請するというものではありません。

まず、不動産の登記状況や相続人を調査します。そして、亡くなった方が所有していた不動産を誰が相続し、誰の名義で登記するのかを確認したうえで、必要な書類を整え、法務局に登記申請を行います。

この記事では、司法書士へ相続登記を依頼してから登記が完了するまでの流れと、依頼する方に準備していただくことを、7つの段階に分けて説明します。

目次

相続登記は「調査・登記内容の確認・申請」の順に進みます

相続登記では、主に次の7つの段階を経て手続きを進めます。

段階主な手続き依頼する方が行うこと
1.相談相続関係・不動産・遺言書の確認分かる範囲で事情を伝える
2.見積り・依頼必要な業務と費用の確認見積内容を確認して依頼する
3.調査戸籍・住所・不動産の調査手元の資料を提供する
4.相続する人の確認誰が不動産を相続し、誰の名義で登記するか確認必要に応じて相続人間で協議する
5.書類作成協議書・委任状・申請書等の準備必要な書類に署名・押印する
6.登記申請法務局への申請・補正対応原則として完了を待つ
7.登記完了名義変更の確認・書類の返却受け取った書類を保管する

相続人の人数や遺言書の有無、不動産の登記状況などによって、必要な手続きは異なります。

例えば、遺言書がある場合には、遺産分割協議を行わずに登記できることがあります。また、法定相続分による登記では、遺産分割協議書が不要な場合もあります。

以下では、一般的な相続登記の流れに沿って説明します。

1.お問い合わせ・初回相談

最初に、亡くなった方と相続する不動産について、分かる範囲でお知らせください。

主に確認するのは、次のような内容です。

  • 亡くなった方の氏名、死亡日、最後の住所
  • 亡くなった方と相談者との関係
  • 配偶者や子など、分かっている範囲の相続人
  • 不動産の種類と所在地
  • 遺言書の有無
  • 遺産分割の話し合いが済んでいるか
  • 相続放棄をした方や、既に亡くなった相続人がいるか
  • 不動産の売却など、今後の予定

最初の相談時に、戸籍などの必要書類をすべてそろえる必要はありません。

固定資産税の納税通知書、権利証、遺言書、取得済みの戸籍などがあれば、確認が進みやすくなります。

また、相続人全員が最初から事務所に集まる必要もありません。

まずは代表の方から事情を伺い、どのような手続きが必要になるかを確認します。

2.手続内容と費用の見積り

次に、相続人や不動産の状況を確認し、必要な手続きと費用の見通しをご案内します。

相続登記の費用は、大きく分けると次の3種類です。

  1. 司法書士報酬:戸籍収集、相続関係の調査、書類作成、登記申請などの報酬
  2. 登録免許税:相続登記を申請する際に納める税金
  3. 実費:戸籍謄本、登記事項証明書、郵送料などの費用

例えば、戸籍を依頼する方が自分で集める場合と、司法書士が戸籍収集から行う場合とでは、依頼する業務の範囲が異なります。

また、相続人の人数が多い場合や、何代にもわたって相続登記が行われていない場合には、通常よりも調査や書類作成に時間がかかることがあります。

そのため、最初の見積りでは、確認できた事情を基に報酬と実費の見通しをご案内し、追加の調査や手続きが必要になった場合には、その内容と費用を説明します。

費用や依頼範囲を確認し、納得いただいたうえで手続きを進めます。

3.戸籍・住所・不動産の調査

相続登記では、必要な書類を集めるだけでなく、その内容を確認することが重要です。

戸籍を調べて相続人を確定する

遺産分割協議による一般的な相続登記では、通常、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍などを確認します。

これは、亡くなった方にどのような相続人がいるかを調べるためです。

例えば、現在の戸籍だけでは、以前の婚姻関係で生まれた子などを確認できないことがあります。

また、子がいないために兄弟姉妹や甥・姪が相続人となる場合は、調査する戸籍の範囲が広がります。

相続人の一人が既に亡くなっている場合には、その方の相続関係についても調査が必要になることがあります。

必要な戸籍の範囲は、相続関係や登記の方法によって異なります。

登記簿上の住所とのつながりを確認する

登記簿に記録されている所有者の住所と、亡くなった方の最後の住所が異なることがあります。

この場合、住民票の除票や戸籍の附票などを確認し、登記簿上の所有者と亡くなった方が同一人物であることを明らかにします。

長い年月が経過していると、住民票の除票などが保存期間の経過により取得できない場合もあります。

そのような場合には、取得できる資料を確認し、登記に必要な証明方法を検討します。

詳しくは、相続登記で登記簿の住所が古い場合の対処方法でも説明しています。

相続する不動産を確認する

相続登記では、名義変更する不動産を正確に特定する必要があります。

登記事項証明書、固定資産税の資料、名寄帳などを確認し、対象となる土地や建物を調べます。

特に注意したいのは、次のような不動産です。

  • 自宅の敷地とは別に所有している土地
  • 自宅に接する私道の共有持分
  • 固定資産税の通知書に記載されていない不動産
  • 遠方にある土地や建物
  • 亡くなった方が共有持分だけを所有していた不動産

相続登記を終えた後で別の土地が見つかると、追加の登記手続きが必要になることがあります。

そのため、申請前に対象不動産をできるだけ正確に把握することが大切です。

4.相続した不動産を誰の名義にするか確認する

相続人と不動産が確認できたら、亡くなった方の不動産を誰が相続し、誰を所有者として登記するのかを確認します。

相続による名義変更には、主に次のような方法があります。

遺言書がある場合

亡くなった方が遺言書を残している場合は、まずその内容を確認します。

遺言書の内容によっては、相続人全員による遺産分割協議を行わずに、指定された相続人へ名義変更できることがあります。

ただし、自筆証書遺言については、家庭裁判所での検認が必要となります。

公正証書遺言や、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書については、検認は不要です。

遺言書がない場合

遺言書がない場合には、相続人全員で話し合い、誰が不動産を取得するかを決める遺産分割協議が一般的です。

例えば、父が亡くなり、母と子2人が相続人となった場合、相続人全員の合意によって、母が自宅を単独で取得することもできます。

合意がまとまった場合は、その内容を遺産分割協議書にまとめます。

なお、遺産分割協議をせず、法定相続分に応じた共有名義で相続登記をする方法もあります。

ただし、法定相続分による共有登記を行うことと、将来の不動産の管理や処分の問題が解決することは別です。登記方法については、その後の利用予定も考慮する必要があります。

相続人間で話し合いがまとまらない場合

相続人の間で意見が対立し、遺産分割協議がまとまらないこともあります。

例えば、不動産を誰が取得するかについて意見が一致しない場合や、遺言書の有効性をめぐって争いが生じている場合です。

このような場合、司法書士が対応できる業務には法律上の限界があります。

司法書士は、一方の相続人の代理人として、他の相続人と遺産分割の交渉をすることはできません。また、家庭裁判所の遺産分割調停において、相続人の代理人となる権限もありません。

司法書士は、法律で認められた範囲で戸籍調査や登記関係書類の作成などを行えますが、相続人間の争いそのものを代理して解決することはできません。

特に、相続人間の対立が激しく、話し合いによる解決が難しい場合には、当事務所では、遺産分割協議の成立を前提とした相続登記のご依頼を、その段階でお受けできません。

まずは弁護士に相談し、必要に応じて家庭裁判所の遺産分割調停などによって解決を図ることになります。

遺産分割協議が成立した場合や、調停・審判などによって不動産の取得関係が確定した場合には、その内容に基づく相続登記について、改めてご相談いただけます。

なお、遺産分割がまとまらない場合でも、相続登記の申請義務の期限には注意が必要です。

期限内に通常の相続登記を行うことが難しい場合には、相続人申告登記など、状況に応じた対応を検討する必要があります。

相続人申告登記は、相続登記の基本的な申請義務を簡易に履行するための制度であり、それ自体によって不動産の名義が取得者へ変更されるものではありません。

5.遺産分割協議書などへの署名・押印

遺産分割協議によって取得者が決まった場合には、その内容に基づいて遺産分割協議書を作成します。

司法書士に依頼した場合は、登記に必要な内容を確認し、合意に基づいて協議書を作成することができます。

通常、遺産分割協議書には相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を用意します。

また、登記申請を司法書士へ委任する場合には、委任状などの必要書類を準備します。

相続人全員が事務所に集まる必要はありません

遺産分割協議書は、相続人全員が同じ場所に集まって署名・押印しなければならないものではありません。

例えば、相続人が千葉県、東京都、埼玉県など別々の場所に住んでいる場合でも、書類を郵送し、それぞれが内容を確認して署名・押印する方法で進められます。

ただし、署名・押印する前に、協議書の内容を十分に確認することが大切です。

取得者や不動産の記載などに誤りがあると、訂正のために改めて書類を作成したり、署名・押印をお願いしたりする場合があります。

書類を郵送する場合の本人確認方法などは、個別の事情に応じてご案内します。

6.法務局へ相続登記を申請する

必要な書類がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局へ相続登記を申請します。

司法書士へ依頼した場合は、司法書士が代理人として登記申請を行います。

申請方法には、書面申請のほか、オンライン申請などがあります。

法務局では、提出された申請情報や添付書類を審査します。

審査の過程で補正が必要になった場合には、司法書士が内容を確認し、必要な対応を行います。

登記申請から完了までの期間

法務局へ申請してから登記が完了するまでの期間は、法務局の混雑状況や申請内容などによって異なります。

また、戸籍の収集や相続人間の協議に必要な期間と、法務局での審査期間は別です。

そのため、相続登記全体に要する期間を考えるときは、書類の準備から登記完了までを見込む必要があります。

不動産の売却や融資など、希望する時期が決まっている場合は、できるだけ早い段階でお知らせください。

7.登記完了・書類の返却

登記が完了すると、通常、申請人となった新しい所有者に登記識別情報が通知されます。

登記識別情報は、将来その不動産を売却したり、担保権を設定したりする際に重要となる情報です。

登記識別情報は再通知されないため、大切に保管してください。

登記識別情報を紛失した場合でも売却などが不可能になるわけではありませんが、別の本人確認手続きなどが必要となり、追加の費用や時間がかかる場合があります。

司法書士は、登記事項証明書等で新しい名義人や持分が正しく登記されていることを確認します。

そのうえで、登記識別情報通知書、登記完了証、原本還付を受けた戸籍や遺産分割協議書など、返却する書類を整理してお渡しします。

返却された書類は、将来の売却や相続などで必要になることがあるため、まとめて保管することをおすすめします。

相続登記の完了までにどのくらい時間がかかる?

相続登記に必要な期間は、相続人や不動産の状況によって大きく異なります。

相続の状況時間がかかる主な理由
相続人が少なく、書類がそろっている比較的手続きを進めやすい
亡くなった方の本籍が何度も変わっている戸籍の確認や収集に時間がかかる
兄弟姉妹や甥・姪が相続人になっている相続関係の調査範囲が広がる
何代にもわたって相続登記がされていない複数世代の戸籍調査や相続関係の整理が必要になる
相続人が遠方に住んでいる書類の郵送や返送に時間がかかる
遺産分割の話し合いがまとまっていない協議や調停などにより長期間かかる場合がある

特に、祖父母や曾祖父母の名義のままになっている不動産では、相続関係が複雑になっていることがあります。

例えば、祖父が亡くなった後に父も亡くなり、さらにほかの相続人にも相続が発生している場合です。

このような数次相続では、戸籍をさかのぼって相続関係を確認し、必要な手続きや登記の順序を検討することになります。

当事務所では、古い相続登記や複数世代にわたる相続についても、ご相談を承っています。

詳しくは、何年も前の相続登記は今からできる?をご覧ください。

相続登記には3年の期限があります

相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。

原則として、自己のために相続が開始したことを知り、かつ、その相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

また、2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象です。

施行前から相続によって不動産を取得したことを知っていた場合は、原則として2027年3月31日が申請期限となります。

ただし、不動産を取得したことを知った時期や、遺産分割が成立した時期によって、期限が異なる場合があります。

遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内に、分割内容を反映した登記を申請する義務もあります。

遺産分割協議がまとまらない場合でも、何もせず期限を過ぎてよいわけではありません。

詳しくは、相続登記の3年の期限についてをご確認ください。

よくある質問

相続人全員が最初の相談に参加する必要はありますか?

最初の相談は、代表の方一人からでも可能です。

ただし、遺産分割協議によって不動産の取得者を決める場合には、原則として相続人全員の合意が必要になります。

最初の相談時点では、相続人の人数や連絡状況など、分かる範囲をお知らせください。

戸籍を自分で集めなければなりませんか?

必ずしもご自身ですべて集める必要はありません。

必要な戸籍の収集を司法書士へ依頼することもできます。

一方、既にご自身で取得した戸籍がある場合には、それらを確認して不足分だけを収集することも考えられます。

どこまで依頼するかは、手続きの状況と見積内容を踏まえて決められます。

不動産が遠方にあっても依頼できますか?

はい。相続登記は、必ずしも不動産所在地の近くにある司法書士事務所へ依頼しなければならないわけではありません。

例えば、千葉県にお住まいの方が、東京都や埼玉県、あるいはさらに遠方の不動産を相続した場合でも、登記申請を依頼することができます。

不動産の所在地を管轄する法務局への申請は、オンライン申請などを利用して対応できます。

相続人全員が事務所へ行かなければなりませんか?

通常、相続人全員が事務所へ来る必要はありません。

郵送や電話などを利用して、必要な書類を準備できる場合があります。

ただし、司法書士による本人確認や意思確認は必要です。案件の内容に応じて、適切な確認方法をご案内します。

遺産分割協議が終わっていなくても相談できますか?

遺産分割協議がまだ終わっていない場合でも、相続人の調査や不動産の確認など、進められる準備があります。

ただし、相続人間で争いが生じ、話し合いによる解決が難しい場合は、登記の依頼をお受けできないことがあります。

その場合は、弁護士への相談や家庭裁判所の手続きなどを検討する必要があります。

また、登記義務の期限についても確認しておくことが大切です。

司法書士に遺産分割調停を依頼できますか?

司法書士は、家庭裁判所の遺産分割調停で、相続人の代理人になることはできません。

法律で認められた範囲で、家庭裁判所に提出する書類を作成する業務は可能ですが、調停で相続人の代わりに交渉や主張を行う代理業務はできません。

代理人が必要な場合には、弁護士へ相談することになります。

調停が成立し、調停調書などに基づいて相続登記を行う段階になれば、司法書士へ登記手続きを依頼することができます。

司法書士へ依頼した後は、何もしなくてもよいのでしょうか?

司法書士が戸籍の収集、登記に必要な書類の作成、登記申請などを担当しますが、依頼する方にもご協力いただくことがあります。

例えば、必要な資料の提供、遺産分割協議の内容確認、書類への署名・押印、印鑑証明書の準備などです。

最初に依頼する業務の範囲を確認しておくと、手続きが進めやすくなります。

まとめ|相続登記は最初から書類をそろえなくても相談できます

相続登記は、相談、調査、相続した不動産を誰の名義にするかの確認、書類作成、登記申請、完了確認という流れで進めます。

必要な書類や手続きは、相続人の人数、不動産の状況、遺言書の有無などによって異なります。

司法書士へ依頼することで、戸籍の収集や相続関係の調査、登記申請などを任せることができます。

一方、遺産分割協議が必要な場合には、誰が不動産を取得するかについて、相続人間で合意する必要があります。

また、相続人間で争いが生じている場合には、司法書士が代理して解決することはできません。弁護士による対応や家庭裁判所の手続きが必要になることがあります。

最初からすべての書類をそろえる必要はありません。

まずは、亡くなった方、不動産、相続人について分かる範囲の情報を整理し、必要な手続きと費用の見通しを確認することから始めましょう。

相続登記についてご相談ください

栗栖司法書士事務所では、東京都文京区を拠点に、東京東部・千葉県北西部などを中心として、相続登記のご相談を承っています。

一般的な相続登記はもちろん、祖父母名義のままになっている不動産や、何代にもわたる相続関係の調査が必要な案件についても対応を検討します。

ご相談の際は、現在分かっている相続人や不動産の状況をお知らせください。

手続きの内容と必要な書類、費用の見通しをご案内します。

参考情報

※本記事は2026年10月時点の制度を前提とした一般的な説明です。必要書類や登記方法は、個別の相続関係や不動産の状況によって異なります。

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