登記済証・登記識別情報がなくても相続登記はできる?見つからないときの確認手順

「父が保管していたはずの土地の登記済証(いわゆる権利証)が見つからない」「登記識別情報を記載した通知書がどこにあるか分からない」。実家の書類を探しているうちに、相続登記の準備が止まっていませんか。

いわゆる「権利証」という言葉で調べる方もいますが、旧制度の登記済証と、現在の制度で通知される登記識別情報は異なります。本記事では正式名称を使い分け、書面を指す場合は「登記識別情報通知書」と表記します。

通常の相続登記では、亡くなった方の登記済証や登記識別情報を提供する必要はありません。見つからないことだけを理由に、準備を止める必要はありません。まずは不動産と現在の登記名義を確認し、相続関係や住所を証明する資料を整理しましょう。

目次

登記済証・登記識別情報がなくても相続登記を進められる理由

土地や建物の所有者が亡くなり、相続によって取得した方へ名義を変える登記は、相続人側から申請できます。不動産登記法63条2項が定める手続きです。

一方、売買などで売主と買主が共同で申請する場合は、原則として売主側の登記識別情報などを提供します。相続による移転登記と、売買による移転登記では、申請の仕組みが異なります。

相続登記で重要なのは、亡くなった方の登記済証・登記識別情報を探し続けることよりも、相続が発生し、誰が対象不動産を取得するのかを、戸籍や遺産分割協議書、遺言書などで証明することです。必要な資料は取得の方法によって変わります。

登記済証・登記識別情報・登記事項証明書の違い

名称何を指すか
登記済証(いわゆる権利証)旧制度で登記の完了時に交付されていた書面です。
登記識別情報登記名義人となる申請人に通知される12桁の符号です。書面そのものの名称ではありません。
登記識別情報通知書登記識別情報を記載した書面です。「通知書が見つからない」という場合は、この書面を指します。
登記事項証明書不動産の表示、現在の登記名義人、持分、担保の登記など、登記記録の内容を確認する書類です。

登記事項証明書を取得しても、登記済証や登記識別情報の代わりになるわけではありません。ただし、通常の相続登記は、これらの提供がなくても進められるため、まず現在の登記内容を調べるところから始めましょう。

登記済証や登記識別情報通知書が見つからないときの3つの確認手順

1.土地と建物をそれぞれ特定する

固定資産税の課税明細、過去の売買契約書、以前取得した登記事項証明書など、手元の資料をまとめます。土地は所在・地番、建物は所在・家屋番号を手掛かりに、現在の登記を確認します。普段使う住所と、登記上の地番は一致しないことがあります。

土地と建物で所有者が違う、土地の一部だけ共有になっているといった場合もあります。「実家一式」とひとまとめにせず、不動産ごとに名義と持分を確認することが大切です。親名義の家を相続したら最初にすることでも、準備段階の確認事項をまとめています。

2.相続人と取得方法を確認する

遺言書があるか、相続人は誰か、遺産分割の話合いが済んでいるかを確認します。遺産分割により特定の相続人が取得する場合は、必要な相続人全員で合意した内容を書面に整えます。遺言による取得や法定相続分での登記では、必要書類が異なります。

登記済証・登記識別情報の代わりに何か1枚を用意すれば、相続登記ができるという仕組みではありません。相続関係と取得内容に合わせて書類をそろえます。詳しくは相続登記に必要な書類一覧をご覧ください。

3.登記上の住所と亡くなった方の住所を照合する

登記に記録された住所が、亡くなった時の住所と異なる場合があります。住民票の除票や戸籍の附票などで住所の経過を確認し、登記名義人と亡くなった方が同一人物であることを整理します。

亡くなってから長期間が経過している場合や転居が多い場合は、取得できる資料だけでは確認が難しいことがあります。この場合は、どの時点の住所が確認できないのか、役所でほかに取得できる記録がないかを調べ、補足資料の要否を検討します。

登記済証・登記識別情報がないことと、住所のつながりを証明できないことは、分けて確認しましょう。住所資料も不足している場合は、残っている書類を示し、管轄法務局や司法書士に具体的な確認方法を相談してください。上申書を1枚作れば必ず受理される、と自己判断することは避けましょう。

後から登記済証や登記識別情報通知書が見つかった場合は、処分せず保管してください。不動産や取得時の情報を確認する資料として役立つことがあります。

手元の書類は「何を確認できるか」で整理しましょう

資料主な確認内容
課税明細・過去の契約書など不動産を探す手掛かり
登記事項証明書現在の名義・持分・不動産の表示
戸籍・除籍・改製原戸籍など死亡の事実と相続関係
住民票の除票・戸籍の附票など亡くなった方の住所の経過
遺言書・遺産分割協議書など取得者と取得内容

これは相談準備のための整理表で、すべての案件に共通する添付書類の確定一覧ではありません。戸籍の範囲、印鑑証明書、取得者の住所を証する情報、評価額に関する資料などは、個別に確認します。

登記済証や登記識別情報通知書を探す間も、相続登記の期限を確認してください

相続登記は、自己のために相続が開始したことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請するのが原則です。相続登記の義務化前に発生した相続には経過措置もあるため、古い相続も含めて期限を確認してください。

正当な理由なく義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となります。ただし、登記済証や登記識別情報通知書が見当たらないというだけで、直ちに過料が科されるという意味ではありません。書類探しと並行して、現在できる調査や準備を進めることが大切です。

相続登記の基本的な流れは、相続登記の手続きの流れをご覧ください。

よくある質問

登記済証・登記識別情報がないと、本人確認情報の作成費用が必ずかかりますか?

いいえ。通常の相続登記で、亡くなった方の登記済証・登記識別情報がないという理由だけで、売買等の際に利用される本人確認情報を必ず作成するわけではありません。相続登記に必要な書類の収集費用や司法書士報酬は、別に検討します。

相続した家を、その後売る場合も登記済証・登記識別情報は不要ですか?

相続登記と、その後の売買登記は別の手続きです。相続登記によって申請人自身が名義人となる場合は、通知を希望しない場合などを除き、登記識別情報が通知されます。その後の売却では、相続人名義の登記識別情報などを確認します。これを提供できない場合にも法定の手続きがあるため、売却を担当する司法書士へ早めに伝えてください。

遺言書があれば、すべて同じ扱いですか?

いいえ。「相続させる」遺言か、遺贈か、取得者が相続人かどうかなどにより申請方法が異なります。本記事は相続による移転登記を中心とした説明です。遺言書がある場合は、文言と取得者を確認してから必要書類を判断します。

書類がほとんどありません。相談できますか?

当事務所では、書類がそろっていない段階でも状況を確認しています。不動産のおおよその所在地、亡くなった時期、遺言書の有無、分かる範囲の相続関係をお知らせください。登記上の住所も古いと分かっている場合は、その事情もお伝えください。

書類の不足を整理して、相続登記の準備を進めましょう

栗栖司法書士事務所は、東京都文京区を拠点に、東京東部・千葉北西部・埼玉南部を中心として相続登記に対応しています。戸籍収集、相続人の確認、合意内容に基づく遺産分割協議書の作成、登記申請など、必要な範囲を確認してご案内します。

「どの書類が足りないのか整理してほしい」「不動産の確認から登記まで依頼したい」という方は、現在の状況と依頼を検討している範囲をお知らせください。相続人間の争いや交渉が必要な場合は、弁護士への相談をご案内することがあります。

手続きの範囲や追加調査によって費用は異なります。相続登記の料金・プランをご確認ください。

本記事は2026年10月時点の一般的な制度説明です。必要書類や申請方法は、登記記録・相続関係・取得原因によって異なります。

目次